J.D. Power Studies

6割近くが年内の旅行を計画するも、新型コロナウイルス感染への不安依然高く「テレワーク」や「ワーケーション」でのホテル利用にも一定の関心

 顧客満足度(CS)調査や消費者動向に関するリサーチ・コンサルティング会社である株式会社J.D. パワー ジャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)は、新型コロナウイルスと旅行意向に関する調査結果を発表いたします。

 5月25日に緊急事態宣言が解除され、6月19日には全国的に都道府県をまたいだ移動自粛要請の解除も予定されています。このような中、J.D. パワーでは、過去1年間に旅行に行った消費者を対象に、旅行に対する意向や考えを調査しました。また、J.D. パワーでは4月にアメリカでも同様の調査を実施しており、二か国間の消費者のギャップについてもご紹介いたします。

 以下が調査結果となります。本調査結果を是非ご活用いただけますと幸いです。

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= 調査概要  =
■調査方法:インターネット調査   
■調査期間:2020年6月5日~6月8日
■対象者  :過去1年間にビジネス又はプライベート目的で1泊以上の旅行をしたことのある日本居住者 1,909名

<参考>アメリカの調査 
■調査方法:インターネット調査   
■調査期間:2020年4月17日~19日
■対象者   :過去1年間にビジネス又はプライベート目的で1泊以上の旅行をしたことのあるアメリカ居住者 1,155名

※本リリース内容の転載にあたりましては、出典として「J.D. パワー調べ」という表記をお使い頂けますようお願い申し上げます。

 

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今後6か月以内での旅行予定は6割弱。新型コロナウイルス感染への心配が、旅行意欲を大きくそいでいる。

図1.今後6か月以内に仕事もしくはプライベート目的で宿泊を伴う旅行をする予定はありますか。

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今後6か月以内での旅行予定の割合は、プライベート目的、ビジネス目的を合わせて58%となり、半数以上が旅行を予定をしています。この割合をアメリカと比較すると、日本人が若干低く、旅行に対してやや消極的な様子がうかがえます。

 

図2.今後6か月以内に旅行をするつもりがないのはなぜですか。

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旅行をするつもりがない理由は「新型コロナウイルスの感染が心配」が68%とトップ、次いで「感染拡大に伴う移動や出入国制限が改善するとは思わない」が52%と続きます。国内では緊急事態宣言が解除されても、新型コロナウイルスの影響が旅行意欲に大きく影を落としています。

一方、「旅行をする経済的余裕がない」については18%にとどまり、アメリカの41%を大幅に下回っています。感染に対する不安が軽減されれば、旅行需要が戻ることが期待されます。

 

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旅行予定があっても、半数が旅行中の新型コロナウイルスへの感染を危惧。感染を心配する人の割合はアメリカを大きく上回る。

図3.今後6か月以内に予定している旅行中に新型コロナウイルスに感染することをどの程度心配していますか。

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今後、6か月以内の旅行を予定している層に、旅行中の自身の新型コロナウイルスへの感染をどの程度心配しているか尋ねたところ、半数以上が心配しているという結果となりました。これはアメリカの割合を20ポイントと大きく上回る結果となっています。

ビジネス旅行者、プライベート旅行者を比較すると、アメリカと同様にビジネス旅行者の方が心配している割合はやや高くなっていますが、アメリカほどの差は見られません。

旅行予定のある人であっても、新型コロナウイルスへの感染に対する不安が高いことがわかりました。

 

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旅行需要の回復は、まず「車での近場への旅行」(50%)から。「飛行機での国内旅行」は30%となるが、「海外旅行」は17%にとどまる。「ホテル」への宿泊意向は48%。

図4.全国での移動自粛要請や渡航制限が解除されたら、どのような旅行なら行ってみたいと思いますか。

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移動自粛要請や渡航制限が解除された後、どのようなタイプの旅行であればしてみたいかを尋ねました。

最も多かったのは「車での近場への旅行」の50%となり、移動手段としては鉄道や飛行機よりも、他人との接触が少ない「車」から回復していくと言えます。

「飛行機での国内旅行」は30%となっていますが、「飛行機での海外旅行」は17%にとどまり、飛行機を利用した、特に海外への渡航の意向回復には時間がかかりそうなことを示唆しています。

宿泊施設タイプに着目すると「ホテル」が48%と最も多く、「旅館」が35%と続き、「民泊」は3%にとどまりました。

アメリカと比較をすると、鉄道利用の旅行を除き日本は全般的に今後の旅行意欲が低い割合にとどまり、新型コロナウイルスに対して、アメリカ以上に慎重な姿勢が結果に反映していることが考えらます。

なお、車での旅行意向の違いは自動車の保有台数の差を始め、自動車の利用状況の違いに起因していると考えられます(1,000人あたりの自動車保有台数:アメリカ 804台、日本 609台 出典:総務省 世界の統計2020)。

 

移動の際の交通手段は自家用車の利用が圧倒的に高く、遠方に移動する「新幹線・特急列車」がそれに続く。

図5. 今後してみたい旅行(図4)で回答いただいた旅行の往復や旅行中に、どのような移動手段を利用したいと思いますか。

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移動自粛要請や渡航制限が解除された後、してみたい旅行の移動手段に関しても尋ねました。

「自動車」を利用したい割合が75%と最も高く、中でも「自家用車」が65%と全体の2/3を占めています。一方、公共交通機関である「鉄道」は47%、「飛行機」は40%となりました。鉄道の中では、遠距離移動に適した「新幹線・特急列車」が43%となっており、公共交通機関での遠方への移動に抵抗のない層も一定割合存在していると言えます。

尚、「レンタカー」は、全体では18%にとどまりましたが、今後してみたい旅行のタイプ別(図4)に見ると少し様子が違っています。「飛行機での国内旅行」「滞在型リゾートホテルへの旅行」に行ってみたい人のうちの31%、「鉄道での遠くへの旅行」に行ってみたい人では28%が、移動手段としてレンタカーをあげています。目的地まで公共の交通手段で移動した後の足としてのレンタカーは、一定需要があると考えてよいでしょう。

 

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63%が周辺観光の拠点として、51%が保養目的でホテルに宿泊。ビジネスパーソンでは、25%が「ワーケーション」目的での宿泊を希望。

図6. 今後6か月間に次のような目的でホテルの宿泊や利用をしたいと思いますか。

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今後6か月間にホテルの宿泊や利用をしたい目的について尋ねました。根強い人気があるのは、「周辺観光の拠点としての宿泊」で63%となりました。自粛中にはなかなか行けなかった場所を訪れたり、美しい風景で外出自粛疲れを癒したいという気持ちの表れとみて取れます。その一方で、ホテルでの「保養目的での宿泊」も51%となり、人込みを避けながらゆっくり過ごしたいという気持ちの表れと考えられます。

また「地元や近場での宿泊」を望む割合は35%となりました。インバウンドや長距離移動を伴う旅行の低迷が大きく、旅行需要が新型コロナウイルス感染拡大の前の水準まで回復するには時間を要すことが予想されることから、旅行業界では地元や近場から需要回復を目指す動きが見られています。今後の旅行需要喚起に向けた各事業者や自治体の取り組みが期待されます。

図7. 今後6か月間に次のようなビジネス目的でホテルの宿泊や利用をしたいと思いますか。

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また、ビジネスパーソンに対して、ビジネス目的でホテルを利用したいか尋ねたところ、新型コロナウイルス感染拡大を機に急速に広まったテレワークでの利用(20%)よりも、馴染みが薄いと思われた「ワーケーション*」での利用(25%)の方が高く、注目すべきポイントとなりました。特に若い世代での意向が高く、20代、30代では29%となっています。多くのビジネスパーソンがテレワークを経験したことにより、場所を問わず仕事が出来るメリットを実感し、新しい働き方と休暇の過ごし方に対する意識の変化が表れてきていると考えられます。

* ワーケーション: 「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、地方やリゾート地などでテレワークで働きながら休暇を取る仕組みのことを指す。近年注目が高まっており、2019年には「ワーケーション自治体協議会」が設立され、複数の自治体が加盟している。

 

J.D. パワー ジャパン GBI部門 トラベルインダストリー シニア・マネージャー 日高志津枝のコメント

日本での新型コロナウイルス感染者数は約1万7千人、アメリカの感染者数は200万人を超えている状況です(6月15日時点)。しかしながら、新規感染拡大が落ち着いた後の旅行意欲に関しては、アメリカの方が積極的な様子がうかがえます。

日本人の旅行意欲に大きな影を落としていると考えられるのは、新型コロナウイルス感染への心配と、出入国制限も含めた移動自粛が簡単には緩和されないのではないか、という考えです。新規感染者数が大きく減少し、政府が6月19日の全国的な都道府県間の移動自粛要請解除の方針を示している中での調査でしたが、それでも不安は払しょくされていない様子がうかがえます。

新型コロナウイルス感染への不安を抱えながらも旅行を計画する消費者に対して、安心・安全を感じてもらえる環境作りや、そのことを適切に伝える情報提供を行っていくことが、旅行関連事業者に強く求められていると考えられます。

一方、テレワークの急激な拡大により、ビジネスパーソンの中には新しいホテルの宿泊や利用方法の需要が生まれてきている様子も垣間見られました。これはホテル業界にとって、新たなビジネスチャンスにつながると考えられます。これを好機と捉え、新しいニーズへの対応を進めていくことも必要と言えるでしょう。

 

J.D. パワーについて
J.D. パワー(本社:米国ミシガン州トロイ)は消費者のインサイト、アドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。企業の顧客満足度改善やパフォーマンス向上のソリューション提供のため、現在、北米、南米、アジアパシフィック、ヨーロッパでビジネスを展開しています。

 

本件に関する報道関係の皆様からのお問合せ先
株式会社ジェイ・ディー・パワー ジャパン
コーポレート コミュニケーション 北見
TEL:03-4570-8410  E-mail: release@jdpa.com

 

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