J.D. Power Studies

約6割の人がスマートフォン決済の普及により「暮らしが便利になる」。一方、非利用者の過半数が不正利用や個人情報の漏洩に不安

 顧客満足度(CS)調査や消費者動向に関するリサーチ・コンサルティング会社である株式会社J.D. パワー ジャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)は、20代~60代の男女400名を対象に、「キャッシュレス化に関する実態・意識調査」を実施しました。その調査内容を発表いたします。

 政府は昨年「キャッシュレス・ビジョン」を公表し、国を挙げてキャッシュレス化を推進する動きが出ています。訪日外国人に向けた対策、事業者の生産性の向上、コストの削減、消費者の利便性や安全性の向上が目的とされており、「2020年までの主要な商業施設や観光スポットなどにおけるクレジットカードや決済端末の完全対応」や「2025年までのキャッシュレス決済比率を40%程度に引き上げ」が目標として掲げられています。

また最近では、QRコード決済事業に数多くの企業が参入し、各社による大規模な還元キャンペーンや広告が繰り広げられ、注目されていますが、一方で、不正利用や統一規格化に向けた課題といった問題も浮上しています。

このようなキャッシュレス化を取り巻く現状を受け、J.D. パワーでは、キャッシュレス化の実態とQRコード・バーコード決済をはじめとする、スマートフォン決済に対する消費者の意識を探るべく、調査を実施しました。

本調査結果を是非ご活用頂けますと幸いです。

■キャッシュレス決済とは・・・クレジットカード、電子マネー、QRコード・バーコード決済、デビットカードなど、現金以外での決済方法全般を表す。
■スマートフォン決済とは・・・スマートフォンを使用して行う決済方法全般を表す。

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= 調査概要  =
■調査方法           :インターネット調査          
■調査期間           :2019年8月
■対象者              :全国の20代~60代の男女 400名

※本リリース内容の転載にあたりましては、出典として「J.D. パワー調べ」という表記をお使い頂けますようお願い申し上げます。

 

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キャッシュレス決済の直近1ヶ月以内の利用率、および今後の利用意向は、「クレジットカード」、「電子マネー」の割合が圧倒的に高く、「QRコード・バーコード決済」に対し大きく差をつける結果に。
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 直近1ヶ月以内に利用したキャッシュレス決済について尋ねたところ、「クレジットカード」の利用割合が74%と最も高く、次いで「電子マネー(64%)」、「QRコード・バーコード決済(24%)」という結果に。

また、今後の利用意向については、利用してみたい順に、「クレジットカード(70%)」、「電子マネー(64%)」、「QRコード・バーコード決済(40%)」となりました。

 

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約4割(39%)が1ヶ月以内にスマートフォン決済を利用したと回答。
年代別では、20~30代の約半数がスマートフォン決済を利用していると回答していることから、「スマホ世代」には、スマートフォン決済がより浸透していることが分かった。
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 1ヶ月以内にスマートフォン決済を利用したかという質問には、約4割(39%)が利用したと回答。

このことからも分かるように、スマートフォン決済とクレジットカード決済の利用経験度合いには、依然大きな差が見られました。

 一方で、年代別に見てみると、20~30代と若年層においては約半数(49%)がスマートフォン決済を利用しており、「スマホ世代」では、スマートフォン決済の利用が広がってきていることが分かりました。

 

店舗や施設におけるスマートフォン決済の対応有無は、購買行動に大きな影響を与えていないことが判明。特に女性の約8割が「スマートフォン決済の対応有無にこだわらない」と回答。
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 スマートフォン決済利用者に、スマートフォン決済への対応有無と店舗選択の関係性について尋ねたところ、全体として約7割(68%)がスマートフォン決済の対応有無にこだわらず、利用したい店舗・施設を選択すると回答。

スマートフォン決済の対応有無は、生活者の購買行動に大きな影響は与えていないことが明らかになりました。

 さらに男女別で見てみると、「スマートフォン決済の対応にこだわらず、使いたい店舗や施設を選ぶ」という回答は、男性が 約6割(58%)に対し、女性は約8割(79%)、一方「できるだけスマートフォン決済機能に対応している店舗や施設の中から選ぶ」と回答したのは、男性が約4割(42%)、女性が約2割(21%)という結果になりました。

 

約6割の人が、キャンペーンなどの「お得感」よりもスマートフォン決済事業者の一本化など、「利便性」をスマートフォン決済に求めていることが明らかに。
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 スマートフォン決済の利用の際の意向については、種類・ブランド・事業者を一本化したいと約6割(58%)が回答。

キャンペーンの際に都度適切なブランド・事業者を選択したい(42%)より、手間・時間などをかけずに利用したいという意向の方が強い結果となりました。

 こちらも男女別に比較をすると、男性の方が一本化による「楽さ」をより優先する傾向が見られました。

 

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スマートフォン決済の利用者と非利用者の間で「QRコード・バーコード決済」の利用意向の差がより顕著。セキュリティ面での不安から、スマートフォン決済への安心感は低く、特に非利用者や女性において、ネガティブな印象が強い。
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 今後利用したいキャッシュレス決済方法について尋ねたところ、スマートフォン決済の利用者は、非利用者に比べ、いずれの決済方法に対しても利用意向が高い結果となりました。特に 「QRコード・バーコード決済」への利用意向は、スマートフォン決済の利用者で65%、非利用者で24%と、両者間での利用意向の差が41%もあり、その差が顕著であることが分かりました。

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 また、スマートフォン決済に対するイメージは、全体では「不正利用への不安(50%)」、「個人情報漏洩への不安(42%)」といったネガティブなイメージがTOP2となりました。次いで、「ポイント還元や割引でお得になる(35%)」、「現金を持ち歩くわずらわしさがない(35%)」「支払いが素早い(35%)」と続く結果に。お得感や利便性の良さといったイメージよりも、セキュリティ面での不安感が上回る結果となりました。

 スマートフォン決済利用者に限定すると、 「ポイント還元や割引でお得になる」、「現金を持ち歩くわずらわしさがない」、「支払いが素早い」といったポジティブなイメージは非利用者を大きく上回るものの、「支払いできる加盟店が少ない」という、スマートフォン決済の利用環境に対する不満のイメージが、非利用者の倍以上の割合で挙げられています。

 一方、非利用者では、「不正利用への不安」、「個人情報漏洩への不安」が半数前後から挙げられ、セキュリティ面に対する不安感は非利用者にとって、より強いことが伺えます。また、女性は男性以上に、スマートフォン決済利用へネガティブなイメージを持っている人が多いこともわかりました。

 

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スマートフォン決済の普及により暮らしが「便利になる」と全体の約6割が回答。
スマートフォン決済の非利用者については、見方が半分に分かれる結果に。
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 スマートフォン決済機能の暮らしへの影響について尋ねたところ、スマートフォン決済の普及により暮らしが「便利になると思う」(便利になると思う+やや便利になると思う)が57%、「便利になると思わない」(あまり便利になると思わない+便利になると思わない)が43%という結果に。スマートフォン決済の非利用者に限ると、「便利になると思う」と「便利になると思わない」が拮抗する結果となりました。

 

日常生活シーン以外でのスマートフォン決済、イメージ不透明。
お祝いごとでのスマートフォン決済には、女性がやや期待感。
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 今後スマートフォン決済が使えると便利だと思う場面、場所を尋ねたところ、「お祝い金(※1)(11%)」、「結婚式のご祝儀(9%)」、「ギャンブル(※2) (9%)」、「葬儀の香典(7%)」、「さい銭(6%)」という結果に。日常の買い物シーン以外でのキャッシュレス決済にまだピンと来ない、イメージが湧かない、というような状況がうかがえます。

全体的には女性の方が男性に比べ関心が高く、「お祝い金(※1)(14%)」、「結婚式のご祝儀(11%)」と、お祝いごとでのスマートフォン決済に、一定の期待感がある様子がうかがえました。

(※1)お祝い金・・・誕生日、お年玉、入学・卒業、就職など
(※2)ギャンブル・・・パチンコ、競馬、競輪など

 

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 現在、スマートフォン決済サービス事業者各社で、ポイント還元、キャッシュバックといったキャンペーンが大々的に実施されています。また、政府は消費税の10%引き上げと同時に、キャッシュレス決済時に最大5%のポイント還元を実施すると発表しています。しかしながら、本調査では、一般消費者はポイント還元などの「お得感」よりも、「不正利用」「情報漏洩」への不安へのイメージが依然多く挙がっており、まだまだ課題がありそうだと言えます。

 今後ますますの普及には、キャッシュレス決済未経験者からの安心感や信頼性獲得がカギと言えそうです。不安を払しょくする体制の強化やシステムの改善、そしてお得感の訴求だけではなく、利便性や効率性に関する情報提供をしっかりと消費者に届けていく、官民一体となった活動がますます重要となるでしょう。また、スマートフォンを持たない、又はネットやスマホに不慣れな高齢者が取り残されないような対応も必要だと考えます。

 一方、回答者の約6割がスマートフォン決済の一本化を求めており、QRコード決済の統一規格化が実現すれば、急速に普及するという期待感もあります。

 本調査では、冠婚葬祭やギャンブルなど、日常の買い物シーン以外での将来的なキャッシュレス決済についても、消費者の反応を聴取しました。現状では、全体的にそのようなシーンでのキャッシュレス決済へのイメージがまだ湧かない印象ですが、結婚式のご祝儀やパーティーの会費などを決済するアプリも既に出始めていますので、将来的には、特別なシーンでの支払いにもキャッシュレス決済が一般的になる日も来るかもしれませんね。 

 

J.D. パワー ジャパン GBI部門 常務執行役員 梅澤希一のコメント

 キャッシュレス決済の重要性が叫ばれていますが、本調査では利用者の実態や一般消費者の意識を知ることができました。現状では、キャッシュレス決済のメインは「クレジット」や「電子マネー」であるものの、「QRコード・バーコード決済サービス」の利用意向は現状の利用率に比べて高く、「QRコード・バーコード決済サービス」の普及を予感させる結果となりました。また、現状では若い年代を中心に普及していますが、今後市場の認知向上と共に、上の年代にも利用が広がることが考えられます。

 大規模な不正アクセス事件をきっかけに、消費者はキュリティ面での安全面に疑問を抱いており、一層の普及に向けて不安解消は必須と言えるでしょう。セキュリティ強化に向けた取り組みを通じて消費者からの信頼を得ることが重要と考えます。

 

2019年9月18日、新たな調査発表!
「J.D. パワー 2019年 QRコード・バーコード決済サービス顧客満足度調査SM

QRコード・バーコード決済サービス市場は今後も急速な成長が期待されています。

このような市場におけるサービスレベルの向上に資するために、J.D. パワー初のQRコード・バーコード決済サービス顧客満足度調査SMを実施いたしました。調査では、ユーザーの利用実態や使い勝手やセキュリティー面の安心感、キャンペーンの魅力度などに関するユーザーの評価から総合満足度を測定しています。

9月18日(水)に調査結果をまとめたリリースを発表いたします。

 

J.D. パワーについて
J.D. パワー(本社:米国カリフォルニア州コスタメサ)は消費者のインサイト、アドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。企業の顧客満足度改善やパフォーマンス向上のソリューション提供のため、現在、北米、南米、アジアパシフィック、ヨーロッパでビジネスを展開しています。

 

本件に関する報道関係の皆様からのお問合せ先
北見(コーポレートコミュニケーション)
Tel: 03-4570-8410  E-mail: release@jdpa.com

 

 

 

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