次回購入時期3年以内はガソリン車、4年後以降はハイブリッド車が優位、EV「まだ先」から「そろそろ」へ?
顧客満足度(CS)調査や消費者動向に関するリサーチ・コンサルティング会社であるJ.D. パワージャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)は2022年7月に、「購入検討する車のエンジンタイプやEV購入意向」に関するアンケート調査を実施しました。次回購入検討するエンジンタイプや、EVの購入意向とその理由などについて一般消費者の考えについて紹介します。
調査結果ダイジェスト
- 次に購入検討するエンジンタイプ、回答者の約半数がガソリンとハイブリットを選択
- 次回購入時期3年以内はガソリン車、4年後以降はハイブリッド車が優位、EV「まだ先」から「そろそろ」へ?
- EV購入を検討する理由トップ2は「ガソリン代がかからない」、「環境に配慮している」
若年層では「アウトドアや緊急時に電源として利用できる」が他の年代より高い25%、シニア層では「家庭用蓄電池として利用できる」が他の年代より高い33% - EV購入を検討しない理由トップ2は「充電スタンドが少ない」、「車の価格が高い」
次に購入検討する自家用車のエンジンタイプ
ガソリン車とハイブリッド車が半数で依然として主流
次に自家用車を購入するとしたら、どのようなエンジンタイプを検討するかを尋ねたところ、約半数がガソリン車(49%)やハイブリッド車(48%)を検討すると回答しました。
2021年調査と比較すると、トップだったハイブリッド車の検討意向が低下して、今回はガソリン車がトップとなりました。
今後、購入検討する自家用車のエンジンタイプ(世代別)
全世代でハイブリット車を購入検討する割合が減少、特にシニア層で顕著
次に世代別に見てみましょう。ハイブリッド車の購入検討意向は2021年と比較すると、どの世代でも減っており、特にシニア層で、57%から44%と-13ポイントも減少していることがわかります。
*若年層:20~34歳、ミドル層:35~44歳、プレシニア層:45~59歳、シニア層:60~69歳
シニア層、新車購入検討意向が減少し、中古車購入検討意向が増加
シニア層に注目すると、新車・中古車の購入検討意向でも興味深い傾向が見られました。
シニア層で新車の購入を検討する割合は、2021年の56%から51%に減少し、反対に中古車は2021年の23%から32%に増加しています。
このデータから、物価高などの影響からコストをよりシビアに捉え、購入価格が割高傾向の新車購入やハイブリッド車の購入を躊躇するシニア層の様子がうかがえます。シニア層を中心に、少しでも価格の抑えられる中古車やガソリン車を視野に入れている人が増加している可能性が考えられます。
*若年層:20~34歳、ミドル層:35~44歳、プレシニア層:45~59歳、シニア層:60~69歳
今後、購入検討する自家用車のエンジンタイプ(購入時期別)
3年以内はガソリン車、4年後以降はハイブリッド車が優位
次に車の購入予定時期別に見てみましょう。3年以内のケースでは、ガソリン車が56%、ハイブリッド車が50%と、ガソリン車が上回っていますが、 4~5年後くらい、6年後以降ではハイブリッド車がガソリン車を上回っています。購入時期が近いケースではガソリン車、4~5年後くらいを境にして、ハイブリッド車がより検討される傾向が表れています。
EV「まだ先」から「そろそろ」へ?
EVに着目すると、3年以内のケースでは24%で、2021年と比較すると+3ポイントとなっています。6年後以降のケースもほぼ同水準の25%でしたが、2021年と比較すると-4ポイントとなっています。
昨年調査では購入予定時期が先であるほど、EVの検討意向が高くなる結果でしたが、本年調査では購入予定時期による検討意向の割合の差はほとんどなくなりました。
この一年でEVのラインナップが増えたり、軽自動車のEVも出始めるなどし、「EVはまだ先の話」から「そろそろ次のマイカーはEVを検討してみようかな」という風に、消費者の気持ちが少しずつシフトしつつある様子が反映されている結果と言えそうです。
EV購入の検討理由
EV購入検討の理由トップ2は、「ガソリン代がかからない」(51%)、「環境に配慮している」(46%)
次回購入検討するエンジンタイプでEVと回答した人にその理由を尋ねました。
最も多くあがったのは「ガソリン代がかからない(51%)」、次いで「環境に配慮している(46%)」、「電気自動車が主流になりつつある(42%)」、「補助金や優遇税制がある(38%)」という結果となりました。
燃油高騰が続く中、ガソリン代がかからないという経済的なメリットがEVを検討する一番の理由となっているようです。カーボンニュートラルへの取り組みが国を挙げて進められる中、環境に配慮する意識の高まりや、それに伴うEVの普及促進の流れや補助金など税制上のメリットも消費者に響いているようです。
EVそのものの性能や特徴についてはどうでしょうか。「走りやエンジンの静かさ(29%)」、「航続距離が伸びた(28%)」、「加速や走行性能の良さ(25%)」など、いずれも約4人に1人が検討理由として挙げています。このことからもEV自体の魅力も評価されつつあると言えそうです。
EV購入の検討理由(世代別)
若年層・シニア層は「環境性能」重視、ミドル層・プレシニア層は「ラニングコスト」重視
世代別に購入検討理由を見ると、世代間の違いも見えてきました。
EVを検討する理由として最も多く挙がったのは、ミドル層・プレシニア層では「ガソリン代がかからない」だったのに対し、若年層とシニア層では「環境に配慮している」でした。
「ガソリン代がかからない」についてはミドル層・プレシニア層と若年層・シニア層を比較すると、約10ポイントの開きがあり、ミドル層・プレシニア層にとって、経済的なメリットが、より重要視されていることがわかります。
一方、若年層・シニア層ではガソリン代がかからないというメリット以上に、環境への意識が高いことが確認されました。
加えて、興味深いポイントとして、若年層では「アウトドアや緊急時に電源として利用できる」が他の年代より高く、車中泊旅やアウトドアといったトレンドの影響が感じられる結果となっています。
またシニア層では「家庭用の蓄電池として利用できる」が他の年代より高くなっており、他の年代に比べ家で過ごす時間が長いシニア層にとって訴求力のあるメリットであることが分かります。
なお、気になる点としては、「EVにかっこよさを感じる」がどの世代でも最も少ない回答だったことです。機能や環境性能だけでなく、デザイン性などEVとしてのかっこよさといったイメージアップにも、今後期待したいところです。
*若年層:20~34歳、ミドル層:35~44歳、プレシニア層:45~59歳、シニア層:60~69歳
EV購入の検討理由(購入時期別)
3年以内のEV検討層は補助金・優遇税制を重視、EVを取り巻く環境にも肯定的な傾向
次に車の購入予定時期別に見てみましょう。
3年以内のケースでは、「補助金や優遇税制がある(51%)」が理由として最も多く挙がりました。4~5年後や6年後以降と比べると+15ポイント以上の差があり、補助金や優遇税制の利用を視野に入れて具体的にEV購入を検討している様子がうかがえます。
「充電スタンドが増えた(34%)」、「加速や走行性能の良さ(34%)」、「モデルの選択肢が増えた(26%)」も、4~5年後や6年後以降と比べると、それぞれ+10ポイント以上上回っており、EVを取り巻く環境に理解を示し、EVの性能が向上しつつあることを認める傾向がより強く出ているようです。
EVを購入検討しない理由
EV購入を検討しない理由トップ2は、「充電スタンドが少ない」(53%)、「車の価格が高い」(48%)
EVを検討しないと回答した人にその理由を尋ねました。
「充電スタンドが少ない(53%)」「車の価格が高い(48%)」が上位を占め、以下、「充電に時間がかかる(38%)」「自宅に充電設備を用意できない(37%)」「航続距離に不安を感じる(35%)」と続いています。
随所にあるガソリンスタンドで数分もあれば給油ができるガソリン車に慣れている多くの人にとって、充電スタンドの数の少なさ、充電時間の長さ、ガソリン車やハイブリット車と比べた場合の航続距離などが不安材料となっている様子がうかがえます。
また、補助金や優遇税制があったとしても、車体価格の高さが懸念材料となっていることも確認できました。
EVを購入検討しない理由(世代別)
充電や価格に対する「抵抗感」、年代が上がるほど大きい傾向
EVを検討しない理由として最も多くあがったのは「充電スタンドが少ない」で全世代で共通するものの、世代別に見ると、世代が上になるほど多くあげられる傾向が確認されました。若年層の47%に対して、シニア層は59%と+12ポイント高くなっています。
次に多くあがった「車の価格が高い」については、プレシニア層で51%と最も多く、若年層の41%に対して+10ポイント高くなっています。
*若年層:20~34歳、ミドル層:35~44歳、プレシニア層:45~59歳、シニア層:60~69歳
EV購入検討する派 VS しない派、考え方の違い
「ガソリン代がかからない」と「車の価格が高い」がともに約半数、依然として充電インフラが課題
EVを検討する派と検討しない派の考えを比較してみましょう。
まずEVの環境性能について、EV購入検討派では「環境に配慮している」が46%と半数近くから挙げられたのに対し、EV非検討派では「環境に配慮していると思わない」が11%と僅か一割程度という結果でした。このことから、EVの優れた環境性能については、検討・非検討に関わらず、多くの人にとって共通の認識であることが分かります。
一方、EV検討派の「EVが主流になりつつある」が42%に対して、EV非検討派では「EVはまだ主流ではない」が29%となっており、検討有無により双方の意識には大きな違いがある様子もうかがえます。
コスト面についてはどうでしょうか。EV検討派の「ガソリン代がかからない」(51%)、EV非検討派の「車の価格が高い」(48%)が共に約半数という結果から、ガソリン代がかからないことがEVの大きなメリットであるのと同時に、購入価格の高さが大きなデメリットにもなっていることを改めて示す結果と言えるでしょう。
EVの課題である「航続距離」や「充電スタンド」についてはどうでしょう。
まず航続距離ですが、EV検討派では「航続距離が伸びた」が28%に対し、EV非検討派では「航続距離に不安を感じる」が35%となっています。非検討派にとっては、依然として航続距離は不安要素ではあるものの、検討派を中心にEVメーカーによる航続距離の向上努力も認められる傾向にあるようです。
次に充電スタンドについては、非検討派では「充電スタンドが少ない」が53%、「自宅に充電設備を用意できない」が37%となっています。反対に、EV検討派で「充電スタンドが増えた」は26%、「自宅に充電設備を用意できる」は21%と、いずれも検討派に比べると低い割合にとどまっています。このことからも、充電インフラはまだ十分に整備されている状況とは言えず、多くの人にとって依然として大きな不安要素となっているようです。
まとめ
本調査では、次回購入検討する車として2人に1人の消費者がガソリン車やハイブリット車を考えており、全体としてみればまだまだEVは主流になっていないことが分かりました。
EVが環境に配慮した車であることは多くの消費者の理解を得ているものの、EV非検討層にとっては、特に充電インフラに関する課題や懸念は依然として大きいこと、そしてガソリン代がかからないことよりも購入価格の高さがネックになっていることが分かりました。これによりEV購入の検討にまで踏み切れないという消費者の心境がうかがえます。
しかしながら、EV検討層の中でも購入予定時期が近い人ほど、充電インフラへの理解が進んでいることや、加速や走行性能など従来の車とは違う電気自動車ならではの魅力が伝わり始めているなど明るい兆しも見えてきています。
EV車の普及に向けては、引き続き官民が連携した充電設備の拡充が強く期待されるところです。また、ガソリン代がかからないことや環境性能としてのメリットだけではなく、走りやエンジンの静かさ、加速や走行性能の良さ、アウトドアでの利用、家庭用蓄電池や緊急時の電源としての利用といったEVならではの魅力についても消費者にもっと知ってもらうことで、より多くの人々の理解が進んでいくのではないでしょうか。
調査概要
購入検討する車のエンジンタイプやEV購入意向に関するアンケート
■調査方法:インターネット調査
■調査期間:2022年7月
■対象者:20~69歳の計2,800名
「新車、中古車、サブスク…車の保有・利用について」のアンケート調査結果も併せてご覧ください。
https://japan.jdpower.com/ja/resources/2022_newsletter_car_ownership
【本リリースに関する報道関係者様からのお問合せ先】
株式会社ジェイ・ディー・パワー ジャパン
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J.D. パワーについて:
J.D. パワー(本社:米国ミシガン州トロイ)は消費者のインサイト、アドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。50年以上にわたり、ビッグデータやAI、アルゴリズムモデリング機能を駆使し、消費者行動を捉え、世界を牽引する企業に、ブランドや製品との顧客の相互作用に関する鋭い業界インテリジェンスを提供するパイオニアです。