自己解決型チャネルにおけるコスト削減と満足度のバランス
【カスタマーサービス アドバイス&インサイト】第9回 :自己解決型チャネルにおけるコスト削減と満足度のバランス
※本記事は2024年8月23日に米国J.D. パワーにて発行されたコラム(“Self-Service: Balancing Cost Savings and Satisfaction” by Mark Miller)を翻訳したものです。
自己解決型チャネルに関する長期的な目標をより深く理解するため、J.D. パワーでは最近、様々な業界のカスタマーサービスおよびカスタマー・エクスペリエンス(CX)の責任者200人以上に対して調査を行った。その結果、自己解決型チャネルを通じて、コスト削減と顧客満足度のバランスを取ることがますます重視されていることが明らかになった。今後3年間で、この二重のアプローチを優先する責任者の割合は、2024年には59%、2025年および2026年には69%に増加すると見込まれている。
カスタマーサービスの専門家の中には、自己解決型チャネルがオペレーターの代替として全面的に導入される日が近いと考える人がいるかもしれないが、データを詳しく見るとそうではないことがわかる。自己解決型チャネルにおける今後の重点推進分野をたずねたところ、今後1年以内(2024年)に「サービス提供コストの削減」に注力したいと回答した人は28%、今後2~3年以内(2025年から2026年)では23%にとどまっている。これは、企業が自己解決型チャネルを単なるコスト削減策としてではなく、顧客体験を向上させつつ業務の効率化を図るための戦略的なツールとして活用していることを示している。
適切なバランスを取る
Striking the Right Balance
「コスト削減と顧客満足度のバランス」に重点を置くとする回答者の割合が高い傾向は、業界責任者に関する私たちの観察と一致している。彼らは、AIと自己解決型チャネルが業務を効率化し、自己解決型チャネルにおける顧客体験を向上させる可能性を認識しているようだ。しかし、複雑な問題に対応するためには、オペレーターを維持することが全体的な顧客満足度を守る上で重要であることも理解している。この戦略的なアプローチは、効率性とサービスの質との間で、慎重にバランスを取る必要があることを示唆している。
自己解決型チャネルへのAIの適用方法
How Does AI Fit into the Self-Service Mix?
カスタマーサービスやCXの責任者にとって、「AI主導の自己解決型チャネル」は最優先事項であり、回答者の82%が、今後数年間のサポート戦略において「非常に重要」または「重要」と評価している。J.D. パワーの認証(J.D. Power Certified Customer Service)*1を取得した企業の多くは、AI統合による通話量の削減方法を模索しているが、自己解決型チャネルへの過度な依存を避ける慎重なアプローチを取っている。短期的なコスト削減に重点を置く競合他社とは異なり、これらの企業は、価値の高い顧客を維持することで長期的な収益性を優先している。複雑な問題を抱える顧客に自己解決型チャネルを強いると、顧客満足度やロイヤルティが損なわれる可能性がある。より戦略的なアプローチとして、AIと有人サポートをバランスよく組み合わせ、シームレスな顧客体験を提供することが求められる。
*1 J.D. Power Certified Customer Service(J.D. パワー カスタマーサービスサーティフィケーション)の認証を受けるには、そのサービスチャネルが、J.D. パワーの業界横断的な顧客満足度調査で設定されたベンチマークに基づくカスタマーサービス・スコアの上位20%以内に入らなければならない。評価基準には、カスタマーサービス担当者の礼儀正しさ、知識、顧客に対する配慮、担当者に繋がるまでの迅速さ、問題解決やリクエストへの対応のタイムリーさなどが含まれる。さらに、自動電話システム使用の顧客体験は、提供される情報の明確さ、電話メニューの操作のしやすさ、電話メニューの指示の理解のしやすさに基づいて評価される。ベンチマークを満たすことに加えて、組織は、業界を超えたトップパフォーマーによる先進的なベスト・プラクティスに基づく業務評価にも合格しなければならない。
https://www.jdpower.com/business/certified-customer-service-program
AIを活用した収益性の向上
Utilizing AI to Drive Profitability
AIは、顧客体験を最適化することで、収益性を向上させる強力なツールとなり得る。AIを活用して顧客体験をモニターし、行動をより深く理解することで、企業は、顧客が複雑なやり取りやフラストレーションのたまるやり取りに遭遇した際、自己解決型チャネルからオペレーターによるサポートへと積極的に移行させることができる。このプロアクティブでパーソナライズされたアプローチは、1回あたりのやり取りのコストを増加させるかもしれないが、フラストレーションや離脱を防ぐことで、最終的には顧客ロイヤルティを守る。実際、逆説的に、オペレーターによるサポートがいつでも受けられるという安心感から、時間の経過とともに自己解決型チャネルの使用率が高まる可能性がある。このようなアプローチは顧客の信頼を育み、自己解決型チャネルのオプションをさらに検討するよう促し、最終的には効率性と満足度の向上を促進する。
自己解決型チャネルのIVR(音声自動応答システム)の成功を効果的に測定するには、顧客が「0」を押したり*2、「オペレーターを希望する」と繰り返し要求したりする割合を追跡することが推奨される。このデータを発信者の特性、通話の種類、時間間隔ごとに分析することで、改善が必要な領域を特定し、価値の高い顧客を適切なタイミングで担当者に繋げる助けになる。顧客満足度を優先し、必要に応じて戦略的に顧客をオペレーターに振り分けることで、企業はロイヤルティを育み、収益性を高め、長期的な成功を達成できる。
*2 一般的に多くのIVRでは、「0」を押すとオペレーターに接続されることが多い。
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