J.D. Power Studies

一年以内に国内旅行をしたのは全体の約半数。旅行支援策の効果は?

顧客満足度(CS)調査や消費者動向に関するリサーチ・コンサルティング会社である株式会社J.D. パワー ジャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)は2022年12月に、「コロナ前後の国内旅行に関するアンケート調査」を実施しました。
調査結果の中から、一年以内の国内旅行や旅行需要を喚起するために実施された各種旅行支援策の実態について紹介します。

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調査結果ダイジェスト

  • 1年以内に国内旅行をした人は全体の約半数(52%)、旅行機会は若年層では回復基調
  • 7割以上が「Go To トラベル」を知っていると回答、各旅行支援策の中でトップの認知率、「ブロック割」の認知度は1割程度
  • 「Go To トラベル」認知者の3分の1が実際に施策を利用、エリアを限定した「ブロック割」や「県民割」は利用が広がらず
  • 1年以内に国内旅行をした人の移動手段、感染リスクを避けた「自家用車」が約6割でトップ
  • 6割前後が、駅や空港、サービスエリア等の移動手段に即した施設での買い物や飲食を利用、最も多い消費金額帯は 「1,000円以上~3,000円未満」

 

 

コロナ前後での国内旅行有無

約半数が「最近1年以内に国内旅行をした」と回答、旅行機会は若年層では回復基調、シニア層は未だ低迷

 

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*若年層:20~34歳、ミドル層:35~44歳、プレシニア層:45~59歳、シニア層:60~69歳

 

1年以内でプライベートな国内旅行をした回数を尋ねたところ、「1回以上」旅行した人の割合は約半数の52%でした。しかしながら新型コロナ流行前の62%と比べると、旅行需要はコロナ前の水準までには完全に戻っていないようです。

世代別にみると、若年層では62%と他の年代層に比べて高いことが確認できます。コロナ前ではシニア層は若年層と同水準でしたが、コロナ前後で比較すると若年層はコロナ前から-6ptであるのに対し、シニア層は-16ptも下回っています。若年層では旅行機会は回復基調となっているものの、シニア層ではコロナ禍からの回復がまだ遅れていることがうかがえます。

 

各種旅行支援策の認知率

7割以上が「Go To トラベル」を知っていると回答、各旅行支援策の中でトップの認知率
 

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*若年層:20~34歳、ミドル層:35~44歳、プレシニア層:45~59歳、シニア層:60~69歳
 

過去に実施された4つの旅行支援策(Go To トラベル、ブロック割、県民割、全国旅行支援)について尋ねました。

まず、各旅行支援策を知っているか尋ねたところ、「Go To トラベル」は76%の人が知っていると回答しました。全世代で7割以上が知っていると回答しており、4施策中、最も高い認知率となりました。新型コロナウイルス流行により大幅に落ち込んだ旅行需要を再度喚起することを目的として最初に実施された「Go To トラベル」は、最もインパクトがあったようです。

続いて認知率が高かったのは「県民割(都民割、府民割、道民割含む)」で、55%という結果でした。ただし、世代間によるばらつきが4つの旅行支援策の中で最も大きく、若年層の48%に対しシニア層では63%と、世代が上がるにつれ、よく知られていました。

現在も実施中の「全国旅行支援」の認知率は51%、世代間での違いは「県民割」程は大きくありませんでした。

「ブロック割」はわずか13%と認知率が最も低く、全世代で10%台にとどまっています。

 

 

各種旅行支援策の利用率

「Go To トラベル」の利用率は4つの旅行支援策の中で最も高い32%、エリアを限定した「ブロック割」や「県民割」は利用率が低い結果に

 

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*若年層:20~34歳、ミドル層:35~44歳、プレシニア層:45~59歳、シニア層:60~69歳

 

次に、各旅行支援策を知っていると回答した人を対象に、どの支援策を利用したかを尋ねました。

最も認知率が高い「Go To トラベル」が利用率でも32%と最も高く、次いで「全国旅行支援」が21%でした。これら2つの旅行支援策は共通して若年層の利用率が他の年齢層と比べて高いことがわかります。若年層は最近1年以内の旅行機会が他の世代よりも高い傾向がありましたが、「Go To トラベル」や「全国旅行支援」といった施策の利用率も最も高く、この世代がコロナ禍で最もキャンペーンを積極的に活用しつつ旅行機会を得ているという実態が確認できました。

「県民割」は「全国旅行支援」よりも知られていましたが、実際の利用率では「全国旅行支援」を下回る結果となりました。

「ブロック割」の利用率はわずか4%と、著しく低水準にとどまっています。「県民割」と「ブロック割」はエリアを限定したものであったこと、特に「ブロック割」は同じエリア内であっても、居住している都道府県により利用できないケースがあるなど、メリットが限られることや制度がわかりにくいことなどが利用率の低さの要因と考えられます。

 

 

旅行支援策の効果

全ての旅行支援策で過半数が「割引施策があったから旅行した」と回答、特にコロナ前の旅行頻度が年に1回未満の人への後押しに

 

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旅行支援策が旅行の実現にどの程度影響したかについて尋ねました。全ての旅行支援策において、利用者の半数以上が「割り引き施策があったから旅行した」と回答しています。特に「県民割(都民割、府民割、道民割含む)」利用者では最も高い63%となりました。

また、どの旅行支援策においても、コロナ前の国内旅行頻度が年に1回未満の人の方が、年に複数回旅行していた人よりも、「割り引き施策があったから旅行した」と回答している割合が高いという傾向が確認できました。

このことから、各旅行支援策は、特にこれまであまり旅行をしていなかった人たちの後押しにつながったと言えそうです。

 

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最近1年以内の国内旅行で主に利用した交通手段について尋ねました。

「自家用車」が61%と最も多く、「新幹線/特急列車」が38%、「飛行機」が26%と続きます。コロナ禍で感染リスクを避け、公共交通機関での遠距離移動ではなく、「自家用車」を利用したプライベート空間での移動で近場への旅行をした人が多かったことが推測されます。この結果は、「県民割があったから旅行をした」という人が多かったこととの関連性も考えられます。「県民割」は、車で県内や近隣都道府県に泊まりに行くくらいなら行ってもいいかな、という考えの人たちにとって、旅行実現のきっかけになりやすい施策だったのではないかと考えれます。

 

 

交通機関に即した施設での消費有無

道の駅、サービスエリア、駅、空港…過半数が移動中の商業施設で買い物や飲食をした、と回答

 

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旅行の際、主に利用した交通手段別に、道の駅、サービスエリア、駅施設、空港施設といった各施設で買い物や飲食をしたかについて尋ねました。

自家用車、レンタカー/カーシェア、高速バスのいずれかを利用した人の59%が道の駅で、66%が高速道路のサービスエリアで買い物や飲食をしています。特にサービスエリアは、車での移動中に休憩や給油等の目的で複数回立ち寄るケースもあり、高い利用率になったと考えられます。

また、新幹線/特急列車のいずれかを利用した人の5割以上が駅ビルや駅ナカの店舗で、飛行機を利用した人の5割以上が空港ターミナル内の店舗で買い物や飲食をしています。

観光地や目的地、宿泊施設以外でも、実に6割前後の人が移動途中にある各施設で買い物や飲食をしている実態が確認できました。

 

 

交通機関に即した施設での消費金額

道の駅、サービスエリア、駅、空港…利用金額は、いずれの施設でも1,000円以上~3,000円未満が最多

 

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施設ごとに、1回あたりの利用でどのくらいの金額を使ったのかも尋ねました。

いずれの施設でも、最も多い価格帯は「1,000円以上~3,000円未満」でした。

施設別にみると、「道の駅」、「駅ビルの店舗(改札外)」、「空港ターミナルのセキュリティ前の店舗」、「空港ターミナルの制限エリア内の店舗」では「3,000円以上」と回答した割合で30%を超えています。このような施設では、お土産や地域特産品の購入、レストランの利用などで1回あたりの利用金額が高くなっていることが多いのではないかと推測されます。

一方、「駅ナカの店舗(駅の改札内)」と「空港ターミナルの制限エリア内の店舗」では使用金額が「1,000円未満」と回答した割合がそれぞれ20%を超えていました。改札内やホームの店舗、空港の制限エリア内の店舗で出発前に乗る直前に軽食やスナックなどを中心に手軽に利用する人が多いのではないでしょうか。

 

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*若年層:20~34歳、ミドル層:35~44歳、プレシニア層:45~59歳、シニア層:60~69歳

 

各施設での使用金額について、より高額の「5,000円以上」利用した人に着目すると、ミドル層でその割合が他の世代よりも多い傾向にあり、若年層は総じて低い傾向にあることがわかります。旅行機会が比較的多い若年層は手軽な買い物をすることが多く、反対に若年層ほど旅行機会が多くないミドル層では、1回の旅行でのまとまった支出が多くなる傾向が見られるようです。

 

 

まとめ

コロナ禍で落ち込んだ旅行需要を喚起するため、政府による様々な旅行支援策が実施されてきました。

今回調査した旅行支援策のうち、「Go To トラベル」は7割以上の人によって認知され、「県民割」と「全国旅行支援」も半数以上の人によって認知されていることが分かりました。また、認知者のうち、「Go To トラベル」が3割強、「全国旅行支援」が2割強の人が実際に利用したと回答しています。とりわけ、若年層や、コロナ前の国内旅行の頻度が年に1回未満といった、あまり旅行へ行っていなかった人たちに対して、より有効な施策となっていたことがわかりました。

国内旅行需要は若年層を中心に戻りつつあり、今年のGWや夏休みはさらなる回復が見込まれます。コロナ渦では、感染リスクを避けるため「自家用車」での旅行が主流で6割を超えていましたが、現在は、鉄道や飛行機などの公共交通機関での旅行もコロナ前の状況にまで回復しつつあります。それぞれの移動手段において、観光地や目的地での消費だけでなく、駅や空港、サービスエリアや道の駅といった、移動途中に利用する施設で買い物や飲食をする割合は半数を超えています。そのような施設を活用することは、その土地ならではのサービスや特色ある商品の魅力に触れることができる機会となり、旅をますます充実させる重要な要素のひとつとなっていくことでしょう。

 

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調査概要

国内旅行の実態や旅行支援施策の効果に関するアンケート調査

■調査方法:インターネット調査 
■調査期間:2022年12月 
■対象者:20~69歳の計5,400名

 

【本リーリスに関する報道関係者様からのお問合せ先】

株式会社ジェイ・ディー・パワー ジャパン
 コーポレート コミュニケーション 北見
TEL:03-6809-2996  E-mail: release@jdpa.com

 

J.D. パワーについて:
J.D. パワー(本社:米国ミシガン州トロイ)は消費者のインサイト、アドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。50年以上にわたり、ビッグデータやAI、アルゴリズムモデリング機能を駆使し、消費者行動を捉え、世界を牽引する企業に、ブランドや製品との顧客の相互作用に関する鋭い業界インテリジェンスを提供するパイオニアです。 

 

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