CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である J.D. Power(本社:米国ミシガン州 トロイ)は、現地時間7月5日に、J.D. Power 2023 U.S. Financial Advisor Satisfaction StudySM(J.D. パワー 2023年米国ファイナンシャル・アドバイザー満足度調査SM)の結果を発表した。
本調査は、年に1回、証券会社*1に所属した「従業員アドバイザー(Employee)」と証券会社と提携しているものの 独立した「独立系アドバイザー(Independent)」の2部門に分け、6つのファクターに基づいてファイナンシャル・ アドバイザーの証券会社に対する満足度を測定している。17回目となる本年調査では、調査設計の変更が行われている。
*1 米国の業態分類での一部の銀行等の資産運用ビジネスを含む。
米国の証券会社は、アドバイザーのエンゲージメント(アドバイザーと証券会社の間の信頼関係)に課題を抱えている。市場の苦戦、コンプライアンスや事務作業の増大、アドバイザーの高齢化が進む中、多くのアドバイザーは自らの出口戦略を計画している。
本調査によると、ファイナンシャル・アドバイザーの28%が顧客と過ごす時間が十分にないと回答し、20%が5年以内に退職すると回答している。
2023年調査の主なポイントは以下の通り:
顧客と過ごす時間が足りない
アドバイザーの28%が、顧客と接する時間が十分にないと答えている。そのようなアドバイザーは、コンプライアンスや事務作業など、資産運用に本質的でない業務に毎月平均41%以上の時間を費やしている。所属または提携している証券会社に対する推奨の度合いを示すNPS®(ネット・プロモーター・スコア®)*2を見ると、「顧客と接する時間が十分にない」と回答したアドバイザーは、「顧客と接する時間が十分にある」と回答したアドバイザーに比べ、従業員アドバイザーでは27ポイント、独立系アドバイザーでは30ポイント低い(-100~+100ポイント)。
*2ネット・プロモーター・スコア®及びNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
出口を見据える
米国のファイナンシャル・アドバイザーの平均年齢は56歳で、20%のアドバイザーが5年以内に退職すると回答している。さらに、従業員アドバイザーの30%、独立系アドバイザーの28%が、今後1〜2年も現在の会社で「必ず働く」ではなく、「おそらく働く」と答えている。このことは、業界や会社を辞めることを考えていないとしても、多くのアドバイザーが投げやりになってしまう可能性を示唆している。このような回答をしたアドバイザーは、自社及び提携会社に強くコミットしていると回答したアドバイザーよりも総合満足度とNPS®が大幅に低い。これは、証券会社が人材確保と引き止めに真剣に取り組んでいないとみなされる可能性があることを意味する。
女性アドバイザーの貢献
従業員アドバイザー部門において、女性アドバイザーの方が、男性アドバイザーに比べ、総合満足度とNPS®が大幅に高くなっている。女性従業員アドバイザーの総合満足度は 637ポイント (1,000ポイント満点)、NPS®は 59 ポイントであった。対して、男性従業員アドバイザーの総合満足度は 578ポイント、NPS®は 36ポイント だった。一方、独立系アドバイザーの間では、男女間で総合満足度とNPS®に大きな差はなかった。
強力なリーダーシップ、サポート、専門能力開発が重要
長期的に会社にとどまる可能性が最も高い従業員アドバイザーの中で、会社に在籍し続ける理由の上位に挙げられているのは、強い企業文化と会社のリーダーシップである。アドバイザーの定着と支持に影響を与えるその他の主な要因としては、サポートやトレーニングといった専門能力開発やテクノロジーが挙げられる。
J.D. パワー エグゼクティブ・マネージング・ディレクター兼ウェルス&レンディング・インテリジェンス部門 部門長 クレイグ・マーティンのコメント
「ここ数年のような厳しい市場環境の中、優れた投資アドバイザーは、顧客のニーズに積極的に対応し、包括的なガイダンスを提供し、顧客にとって最も重要な問題について明確かつ頻繁にコミュニケーションをとることで、他者との差別化を図っている。今、多くのアドバイザーは、ビジネスの成長に欠かせない実践的なサービスを提供する時間を確保するのに苦労している。事務作業やコンプライアンス重視の業務に費やす時間が増え、多くの場合、成功に必要なサポートやリソースを会社が提供してくれるかどうか疑問に思い始めている。」
顧客満足度ランキング
【従業員アドバイザー(Employee)部門】
第1位:Stifel(スタイフェル)(777ポイント)
第2位:Raymond James & Associates(レイモンド・ジェームズ・アンド・アソシエイツ)(711ポイント)
第3位:Edward Jones(エドワード・ジョーンズ)(672ポイント)
【独立系アドバイザー(Independent)部門】
第1位:Commonwealth (コモンウェルス)(798ポイント、10年連続の総合満足度第1位)
第2位:Raymond James Financial Services(レイモンド・ジェームズ・ファイナンシャル・サービシズ)(697ポイント)
第3位:Ameriprise(アメリプライズ)、Cambridge(ケンブリッジ)(同点、664ポイント)
《J.D. パワー 2023年米国ファイナンシャル・アドバイザー満足度調査SM概要》
年に1回、従業員アドバイザーと独立系アドバイザーの両者に対して、それぞれ、自社や提携先の証券会社に対する満足度を聴取し明らかにする調査。今回で17回目の実施となる。今回は調査設計の変更が行われた。
■実施期間:2022年12月~2023年4月
■調査方法:インターネット調査
■調査対象:ファイナンシャル・アドバイザー(従業員アドバイザーと独立系アドバイザー)
■調査回答者数:4,183人
総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を 基に 1,000 ポイント満点で総合満足度スコアを算出。総合満足度を構成するファクターは、総合満足度に対する影 響度が大きい順に以下の通り(カッコ内は影響度)。
【従業員アドバイザー(Employee)部門】:「報酬」(24%)、「リーダーシップと企業文化」(23%)、「専門能力開発」(15%)、「運営サポート」(15%)、「テクノロジー」(12%)、「商品とマーケティング」(11%)
【独立系アドバイザー(Independent)部門】:「リーダーシップと企業文化」(20%)、「テクノロジー」(17%)、「専門能力開発」(17%)、「運営サポート」(17%)、「報酬」(17%)、「商品とマーケティング」(11%)
*本報道資料は、現地時間7月5日に米国で発表されたリリースを要約したものです。
原文リリースはこちら
https://www.jdpower.com/business/press-releases/2023-us-financial-advisor-satisfaction-study
*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。
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J.D. パワーについて:
J.D. パワー(本社:米国ミシガン州トロイ)は消費者インサイト、アドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。50年以上にわたり、ビッグデータやAI、アルゴリズムモデリング機能を駆使し、消費者行動を捉え、世界を牽引する企業に、ブランドや製品との顧客の相互作用に関する鋭い業界インテリジェンスを提供するパイオニアです。J.D. パワーは、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋にオフィスを構えています。事業内容の詳細については、https://japan.jdpower.com/jaをご覧ください。