CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D. パワー ジャパン(本社:東京都港区、CEO:木本卓、略称:J.D. パワー)は、2025年カスタマーセンターサポート満足度調査<金融業界編><EC・通販業界編>の結果を発表した。本調査は金融業界(対象8業態)およびEC・通販業界(対象2業態)におけるカスタマーセンターサポート利用時の満足度を聴取したものである。
チャットボットの導入進む、若年層の利用率は2割近くに
カスタマーセンターサポートにおいてチャットサポートが浸透しつつあるが、特に自動応答によるチャットサポート(AIチャット含む、以下「チャットボット」)の導入が各社で進んでいる。
本調査でも、直近の問い合わせ窓口としてチャットボットを利用した割合は、金融業界で11%、EC・通販業界で13%と、それぞれ1割を超えた。特に若年層(20-30代)では、チャットボットの利用率が2割近くに達し、他の年代を大きく上回った。加えて、同じ用件で一度でもチャットボットを利用した割合は金融業界、EC・通販業界共に全体で約3割となり、チャットボットがカスタマーセンターのチャネルとして存在感を高めていることがうかがえる。
一方で、高年層(60-70代)では依然としてコールセンターが主要チャネルとして定着しており、特に金融業界においては直近で利用したチャネルのうち7割以上を占めた。
金融業界でのチャットボット、高年層の満足度の低さが顕著
金融業界におけるチャットボットの満足度は、コールセンターや有人チャットに比べて低く、とりわけ高年層で顕著に低くなっていることが明らかになった。
総合満足度を構成する全4ファクターのうち、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」や「問題の解決や対応に要した時間」に対する評価が高年層で低く、チャットボット利用時の経験として「提示された回答の情報量が不十分」や「自分が次に何をするべきかの説明が不明確」と感じた割合が若年層に比べ約10ポイント高かった。高年層ではチャットボットを利用しても十分な回答が得られず、時間もかかるため、低い満足度にとどまる傾向があることがうかがえる。
今後優先的に利用したいチャネル、高年層ではチャットボットがコールセンターを下回る結果に
本調査では、今後の問い合わせ時に最も優先的に利用したいチャネルについても尋ねているが、金融業界の結果を見ると、全体的には「直近で利用したチャネル」と同じチャネルが選ばれる傾向が見られた。しかし、チャットボットを利用した高年層で見ると、今後も最優先で利用したいチャネルとしてチャットボットを選ぶ割合が全体よりも低く(チャットボット利用者全体:34%、高年層:23%)、逆にコールセンターを選ぶ割合が全体よりも高く(チャットボット利用者全体:17%、高年層:30%)チャットボットを上回る結果となった。
今後も各企業は生成AIの進歩を背景に、自己解決型チャネルへのシフトを進めると予測される。チャットボットは若年層を中心に浸透し、カスタマーセンター戦略に欠かせない存在となっている。しかし高年層では依然としてコールセンター利用が主流であり、チャットボットを利用した一部の高年層は次回利用を敬遠してしまう様子がうかがえた。
いつでも手軽に利用できることがチャットボットの利点であるが、高年層は明確で丁寧な説明も重視すると考えられる。そのため、満足度向上のためには、利用者の理解度に応じたサポート強度の調整、回答の正確性やナビゲーションの改善といった機能向上に加え、チャットボットでの解決が難しい場合におけるコールセンターや有人チャットへのシームレスな切り替え機能の強化といった取り組みが期待される。
J.D. パワー 2025年カスタマーセンターサポート満足度No.1を発表
総合満足度ランキングは下記の通り。
【金融業界】
<全国系銀行部門>(対象5ブランド)
第1位:りそな銀行(722ポイント)
「利用のしやすさ」、「問題の解決や対応に要した時間」の2ファクターで最高評価。
第2位:みずほ銀行(719ポイント)
第3位:三井住友銀行(716ポイント)
<ネット銀行部門>(対象5ブランド)
第1位:ソニー銀行(739ポイント)
5年連続の総合満足度第1位。「利用のしやすさ」、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」、「問題の解決や対応に要した時間」の全4ファクターで最高評価。
第2位:auじぶん銀行(718ポイント)
第3位:PayPay銀行(700ポイント)
<対面証券部門>(対象5ブランド)
第1位:野村證券(745ポイント)
「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」、「問題の解決や対応に要した時間」の3ファクターで最高評価。
第2位:三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券(同スコア、740ポイント)
<ネット証券部門>(対象5ブランド)
第1位:松井証券(715ポイント)
2年連続の総合満足度第1位。「利用のしやすさ」、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」の2ファクターで最高評価。
第2位:三菱UFJ eスマート証券(旧 auカブコム証券)(713ポイント)
第3位:楽天証券(707ポイント)
<生命保険会社部門>(対象11ブランド)
第1位:メットライフ生命(752ポイント)
「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」、「問題の解決や対応に要した時間」の3ファクターで最高評価。
第2位:オリックス生命、ソニー生命(同スコア、747ポイント)
<代理店系損害保険会社部門>(対象4ブランド)
第1位:三井住友海上火災保険(749ポイント)
「利用のしやすさ」、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」の3ファクターで最高評価。
第2位:東京海上日動火災保険(748ポイント)
<ダイレクト系損害保険会社部門>(対象7ブランド)
第1位:ソニー損害保険(782ポイント)
5年連続の総合満足度第1位。「利用のしやすさ」、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」、「問題の解決や対応に要した時間」の全4ファクターで最高評価。
第2位:SOMPOダイレクト損害保険(762ポイント)
<クレジットカード会社部門>(対象11ブランド)
第1位:アメリカン・エキスプレス・インターナショナル(786ポイント)
5年連続の総合満足度第1位。「利用のしやすさ」、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」、「問題の解決や対応に要した時間」の全4ファクターで最高評価。
第2位:JCB(720ポイント)
第3位:三菱UFJニコス(715ポイント)
【EC・通販業界】
<総合ECサイト部門>(対象5ブランド)
第1位:ヨドバシ・ドット・コム(741ポイント)
4年連続の総合満足度第1位。「利用のしやすさ」、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」、「問題の解決や対応に要した時間」の全4ファクターで最高評価。
第2位:au PAY マーケット(698ポイント)
第3位:Yahoo!ショッピング(695ポイント)
<テレビ通販部門>(対象4ブランド)
第1位:ジャパネットたかた(773ポイント)
2年連続の総合満足度第1位。「利用のしやすさ」、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」、「問題の解決や対応に要した時間」の全4ファクターで最高評価。
J.D. パワー 2025年カスタマーセンターサポート満足度調査SM<金融業界編><EC・通販業界編>概要
年に1回、直近1年以内に金融機関もしくはEC・通販サービスにおいて、商品・サービスに関する困りごと解決や各種問い合わせ、情報収集でカスタマーセンターサポート1 を利用した人2を対象に、「コールセンター」、「オペレーターによるチャットサポート(有人チャット)」、「自動応答によるチャットサポート(チャットボット)」、「メール問い合わせ/問い合わせフォーム」、「FAQ(よくある質問)ページ)」の利用状況や各種経験、満足度を聴取し明らかにする調査。今回で金融業界編は5回目、EC・通販業界編は4回目の実施となる。
なお、EC・通販業界編では、昨年まで「総合ECサイト」「テレビ通販」「カタログ通販」の3業態を対象にしていたが、本年は「総合ECサイト」「テレビ通販」の2業態のみを対象としている。
■実施期間:2025年8月上旬~8月中旬
■調査方法:インターネット調査
■調査対象:金融機関もしくはEC・通販サービスにおいてカスタマーセンターサポートを利用した人(20~74歳)
■調査回答者数:金融業界編 23,562人、EC・通販業界編 2,668人
(全国系銀行部門:1,609人、ネット銀行部門:1,889人、対面証券部門:1,239人、ネット証券部門:2,186人、生命保険会社部門:5,555人、代理店系損害保険会社部門:1,295人、ダイレクト系損害保険会社部門:2,846人、クレジットカード会社部門:6,943人、総合ECサイト部門:1,346人、テレビ通販部門:1,322人)
総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に1,000ポイント満点で総合満足度スコアを算出。総合満足度を構成するファクターは、総合満足度に対する影響度が大きい順に以下の通り(カッコ内は影響度)。
「利用のしやすさ3 」(28%)、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」(25%)、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」(24%)、「問題の解決や対応に要した時間」(22%)
*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。
詳細はhttps://japan.jdpower.com/ja/our-benchmarking-study-methodologyをご覧ください。
【ご注意】チャートやデータを記事に引用する場合には、出典元として本調査名を明記してください。
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J.D. パワーについて:
米国に本社を置くJ.D. パワーは消費者インサイト、アドバイザリーサービス、データと分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。ビッグデータや人工知能(AI)、アルゴリズムモデリング機能を活用して消費者行動を捉える先駆者であり、消費者に関する鋭い業界インテリジェンスを提供してきました。J.D. パワーは半世紀以上に渡って、顧客とブランド・製品に関わり続け、主要産業における世界の大手企業から、顧客対応戦略の指針として信頼されています。
J.D. パワーは、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋にオフィスを構えています。事業内容の詳細については、https://japan.jdpower.com/jaをご覧ください。
1「コールセンター」「オペレーターによるチャットサポート」「自動応答によるチャットサポート」「メール問い合わせ/問い合わせフォーム」「FAQ(よくある質問)ページ)」
2既存顧客のみならず見込み客からの問い合わせなども含む
3「利用のしやすさ」:問い合わせ先の見つけやすさ、利用できる時間帯、待ち時間、使いやすさなど