2023年日本自動車初期品質調査、日本自動車商品魅力度調査から見えた軽EV販売好調の背景と課題
顧客満足度(CS)調査や消費者動向に関するリサーチ・コンサルティング会社であるJ.D. パワージャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)では、年1回、新車購入者による車両評価調査、「日本自動車初期品質調査SM(IQS)」、「日本自動車商品魅力度(APEAL)調査SM」を実施しています。2023年調査は5月から6月に実施し、2万を超える新車ユーザーの声を分析しています。
本ニュースレターでは、この2つの調査データから、好調に販売台数が推移する軽EV(電気自動車)について、 ユーザープロファイルや車両評価の一部を整理し、日本におけるEV普及の現状と課題を解説しています。
【ポイント】
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軽EV購入者の顧客層とは?
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軽EVのユーザー評価は?
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軽EVのバッテリーに対するユーザー評価は?
~日本自動車初期品質調査SM(IQS)/日本自動車商品魅力度(APEAL)調査SM 調査概要(2調査共通)~
■調査対象:新車購入後2~13ヶ月経過したユーザー
■調査対象期間/実施期間:2022年4月~2023年3月まで(納車済み車両)/2023年5月~6月
■調査手法:インターネット調査
■調査数:21,647サンプル(うち、軽自動車は6,742サンプル)
※ 本資料における軽EVとは、日産 サクラ、三菱 eKクロスEVの合計を指します。
軽EV購入者の顧客層とは?
軽EVユーザーは、従来の軽自動車ユーザーに比べ、男性やシニア層が多い
軽EVユーザーに占める男性の割合は70%、また60歳以上(男女)の割合は43%を占め、従来の軽自動車*ユーザーに比べ、かなり多いことが分かります。
* 従来の軽自動車:軽ICE車(ガソリン車)/HEV(ハイブリッド車)
軽EVユーザーは、「他の車両保有率」が高い
軽EVユーザーは、世帯で他にも車を所有している人の割合が55%で、登録車(普通車)や従来の軽自動車ユーザーに比べて高い割合となっています。充電等でEVの運用に支障をきたしたとしても、他の車両でカバーできる複数台保有ユーザーが多いものと考えられます。
<ポイント>
軽EV登場1年目のユーザー層は、従来の軽自動車のユーザー層とは異なっています。上記傾向の他、世帯収入が多いことや、登録車からの買い替えも多い傾向がみられます。従来の軽自動車ユーザーが軽EVの登場を機に乗り換えたというより、EVの運用を模索する消費者の一部、特に経済力のあるシニア層や男性層がトライアル的に軽EVを導入したケースが多かったと推察されます。
軽EVの評価は?
商品としての魅力は高いが、不具合指摘の多さが今後の課題
- 軽EVの商品魅力度の高さを示すAPEALインデックスは697ポイント。これは従来の軽自動車の平均を上回るだけでなく、登録車の平均スコアをも上回っており、軽EVが高い商品力を有していることが分かります。
- 一方、軽EVの総合不具合指摘数は165PP100。これは従来の軽自動車の平均よりも不具合指摘が多く、登録車同等の不具合指摘水準であることを示しています。
<ポイント>
- 軽EVが1年で4万台のセールスをするヒットにふさわしい商品魅力を有していることが調査結果においても確認されました。詳細評価の傾向では、やはりパワートレインや快適性評価の高さがみて取れます。
- 一方で軽EVの初期品質については課題がみられました。不具合指摘はEV関連の不具合に限らず多岐にわたります。現状のユーザー特性(男性やシニア層の多さ、登録車からの乗り換え層等)も不具合指摘が多くなる背景要因となっている可能性もあります。
軽EVのバッテリーに対するユーザー評価は?
軽EVの航続距離評価は登録EVと同等。充電時間の短さは登録EVに対する強み
軽EVのフル充電時の航続距離について「期待より悪い」とする割合は22%でした。これは、バッテリー容量が軽EVより大きい登録EVと同等、もしくは登録EVよりもよい評価です。
さらに、フル充電にかかる時間の評価については、軽EVが登録EVを上回る評価となっています。
<ポイント>
軽EVのバッテリーに関する評価(航続距離や充電時間)は、総じて登録EVに遜色ない(もしくはそれを上回る)ものです。もちろんこれは軽EVの航続距離が登録EVに勝るということではなく、軽EVの20kWhというバッテリー容量を理解した上で、車両用途や運用環境がそれに見合っているならば大きな不満にはならないということであり、軽EVの初期購入者のニーズは十分満たしていたということです。
<考察>
2022年6月に販売開始された軽EVの2モデル(日産 サクラ、三菱 eKクロスEV)は、日本のEV市場としては大きなヒット商品となりました。2022年4月~2023年3月の国産乗用EVの販売台数、約6万台のうち、約4万台をこの2モデルが占めています。
「J.D. パワー2023年日本自動車商品魅力度(APEAL)調査SM」の結果では、軽EVがとても高い商品力を有していることが明らかとなりました。最大の魅力となったのはパワートレインであり、従来の軽自動車では得られないパワー感、スムースさといった動力性能の良さが大きな強みとなっています。また、軽EVの20kWhというバッテリー容量についても、40kWh以上のバッテリーを搭載する登録EVに遜色ない評価を得ています。すなわち車両使用目的や運用環境がそれに適したものであれば、20kWhのバッテリーを搭載したEVでも十分な評価を得られることが確認されました。
一方、「J.D. パワー2023年日本自動車初期品質調査SM(IQS)」の結果では、軽EVの総合不具合指摘数は従来の軽自動車の平均よりも多く、品質面における不具合指摘の多さは懸念材料です。また、今後の課題も見受けられます。特に軽EV初期ユーザーのプロファイルが一般的な軽自動車ユーザーのプロファイルと大きく異なっていることは要注意といえます。現在の軽EV需要は軽自動車市場のEVシフトの始まりではなく、軽/登録にこだわらないEVトライアル需要であり、20kWhというバッテリー容量も、EVを試す上では必要十分という見方ができるかもしれません。もしそうであれば、軽EVと同価格帯で、より大きなバッテリー容量のEVモデルが登場した場合、EVトライアル層はそちらを好む可能性も考えられます。どの程度の価格帯やバッテリー容量がEV需要掘り起こしに最適なのかを見極め、それに基づいた商品開発を行うとともに、EVトライアル層がその次に買うべき商品ラインアップの拡充も求められます。一方、軽自動車市場そのもののEVシフトを本格的に進めるとすれば、今一度、従来の軽自動車ユーザーが求める価格、性能要件を精査し、それに見合った軽EVの商品開発が必要かもしれません。
いずれにせよ、軽EVの登場により日本のEV市場が前年比倍増したことは、日本市場にもEVに関心を寄せる消費者が少なくないことを示唆しています。EVに関心を示す層と規模を見極め、日本市場に求められるEVを適切な価格、適性な性能で供給することがEVシフトという大変革期を勝ち抜くカギとなりそうです。
【本ニュースレターに関するお問合せ】
株式会社ジェイ・ディー・パワー ジャパン
業界関係者様:オートモーティブ部門 佐々木
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J.D. パワーについて:
J.D. パワー(本社:米国ミシガン州トロイ)は消費者のインサイト、アドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。50年以上にわたり、ビッグデータやAI、アルゴリズムモデリング機能を駆使し、消費者行動を捉え、世界を牽引する企業に、ブランドや製品との顧客の相互作用に関する鋭い業界インテリジェンスを提供するパイオニアです。J.D. パワーは、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋にオフィスを構えています。事業内容の詳細については、https://japan.jdpower.com/jaをご覧ください。