CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D. パワー ジャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)は、J.D. パワー 2023年日本EV検討意向(Electric Vehicle Consideration、略称EVC)調査SMの結果を発表した。
本調査は、今後1年以内に新車購入を検討する人を対象に、EV(BEV:バッテリー式電気自動車に限定)の購入検討有無やEVに対する意識などを聴取し、消費者のEVに対する認識や考え方を明らかにするものである。EVに特化したJ.D. パワー調査は、国内では初の実施となる。
調査結果の概要は下記の通り:
新車の購入検討者の2人に1人がEVを検討、うちEVのみを検討する人は4%
今後1年以内に新車購入を検討する消費者の50%が「EVを検討する」と回答した。米国での同調査、J.D. Power 2023 U.S. Electric Vehicle Consideration (EVC) StudySM(J.D. パワー 2023年米国EV検討意向調査SM)の61%に近い結果である。2022年の日米の自動車販売台数に占めるEV占有率(日本:1.7%*1、米国:5.6%*2)に3倍以上の開きがあることを踏まえると、日本は米国以上にEVに好意的な潜在消費者が多く、市場の成長余力が高いということが言える。しかしながら、46%は、EV以外の車も同時に検討しており、EVのみを検討する人はわずか4%であった。
*1(一社)日本自動車販売協会連合会、(一社)全国軽自動車協会連合会の乗用車販売データを元に、J.D. パワーが算出。
*2J.D. Power-LMC Automotiveの販売データを元に、J.D. パワーが算出。
電動車*3ユーザーほどEV検討率が上昇
次回の購入検討車を現在保有している車のパワートレイン別に見ると、ICE(エンジン車)が47%、HEV(ハイブリッド車)が54%、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)が72%、EVが77%という順になった。現保有車の電動化度合いが上がるほど、次回購入車にEVを検討する率が高まることが分かった。
*3 電動車にはFCV(燃料電池自動車)/BEV/PHEV/HEVが含まれる
都会居住者と高所得層のEV検討率が高い
EV検討者を全国8地域別に見ると、EV検討率は関東が56%で最も多く、さらに東京都23区では66%と突出し、都会居住者のEV検討意向が顕著である。また、EV検討率は世帯年収が高くなるにつれて高まり、世帯年収が600万円以上でEV検討率が非検討比率を上回る。関東・東京23区ともに年収が600万円以上の世帯比率が全国平均を上回っており、それがEV検討率を押し上げている要因の一つであろう。
現所有車の走行距離、EV検討/非検討の分岐点に
「走行距離」もEV検討有無に影響する。月間の平均走行距離を見ると、EV検討者が880kmなのに対し、EV非検討者は973kmであった。EVを躊躇する要因の上位にも「満充電当たりの航続距離」が挙がっており、これに呼応する結果となった。
関東在住者の月間平均走行距離は811kmと全国8地域中最も少なく、他地域の居住者に比べてEVの航続距離の問題が大きな障壁になっていないと推測される。対して、全国8地域で最もEV検討率が低かった「四国(39%)」の月間の走行距離は943km、次いで低い「中部(42%)」が1,069km、「中国(45%)」が954kmで、全国平均の924kmをいずれも上回っており、車のヘビーユーザーには現行EVの航続距離では心許ないという心理状況が反映された結果となった。
「自宅外での充電」を許容する
性年代別にEV検討率を見ると「30-40代男性」が特に高く、30代男性で63%、40代男性で54%であった。以降年代が上がるにつれて検討度合いは下がる。
一方で興味深いことに、本調査のEV検討者の7割近くがメインの充電場所を「自宅以外」と想定しており、年代が下がるほどこの比率は高くなる(18-29歳:81%、30代:72%、40代:65%、50代:59%)。「充電ステーション(の充実)」がEV検討理由の上位に挙げられていることからも、彼らは「自宅/近隣で利用する駐車場に充電器の設置がなくても、他所で充電すればEVの使用は可能」と考えていることが見て取れる。
EV検討者が想定する充電ライフ、現実とのギャップを埋められるか
想定する自宅以外のメインの充電場所として根強く支持されているのは「ガソリンスタンド(15%)」だった。「ショッピングモール(8%)」や「自動車ディーラー(7%)」の約2倍近い回答となった。
しかしながら実際には、現在の主要なEVモデルの充電スペックでは、普通充電器の利用を想定すると長時間の充電が不可避であり、EV検討者が想定する充電ライフと現実にはギャップがある。このギャップをどう解消するかが今後の課題である。
ガソリンスタンドの拠点数は減少傾向にあるが、立地の良さは強みであり、石油元売り各社はEV社会到来へ向けた施策を打ち出しつつある。EV社会の旗振り役である行政府にも、既存インフラを有効活用した充電インフラ構築のアイデアが期待される。
J.D. パワー ジャパン リサーチ部門 シニアマネージャー 原 麻衣子のコメント
EVモデルの選択肢が国産登録車を中心に広がりを見せる中、本調査では、買い替え予定者の2分の1がEVを検討しており、この結果から、EVが国内で選択肢の一つとして幅広い年代から市民権を得たと言えるでしょう。
一方で、EVのみを検討する人はまだ少数派であり、EVと非EVを同時に検討する人が最終的にどちらを選ぶかによって、今後のEV市場占有率は大きく変動するでしょう。現状は、ICE車の保有率が多く占めるものの、現保有車の電動化度合いが上がるほど、次回はよりモーター依存度が高い電動車を、と考える傾向もみてとれ、政府が掲げる「2035年までに乗用車新車販売に占める電動車を100%にする」という目標は、あながち絵空事とも言い切れないのではないでしょうか。
EVの課題の一つである航続距離については、現時点では車での移動が中心となる地方居住者にとってはまだ十分とは言えない状況であるものの、都会のライトユーザー層にこそ潜在需要があることが確認できました。
もう一つの課題である充電インフラについては、EV検討者は自宅での充電にこだわらない傾向が見られました。急速充電器の技術的スペックや現状の普及状況を考慮すると、自宅での基礎充電が依然として重要なインフラであることに変わりはなく、個々の住居への充電器敷設を拡充させる施策は不可欠ですが、EVの潜在需要層が期待する公共充電の拡充にこそ、EV普及の実のところの成否が掛かっているのかも知れません。
《J.D. パワー 2023年日本EV検討意向(EVC)調査SM概要》
1年以内に新車購入予定の人を対象に、EVの購入検討意向について聴取し、EV市場の普及に向けた課題や拡大へのキーファクターを探る調査。今年が日本における第一回目の実施となる。
■実施期間:2023年9月
■調査方法:インターネット調査
■調査対象:今後1年以内に新車購入を検討する、18~74歳までの一般消費者
■調査回答者数:6,000人
*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。
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J.D. パワーについて:
J.D. パワー(本社:米国ミシガン州トロイ)は消費者インサイト、アドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。50年以上にわたり、ビッグデータやAI、アルゴリズムモデリング機能を駆使し、消費者行動を捉え、世界を牽引する企業に、ブランドや製品との顧客の相互作用に関する鋭い業界インテリジェンスを提供するパイオニアです。
J.D. パワーは、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋にオフィスを構えています。事業内容の詳細については、https://japan.jdpower.com/jaをご覧ください。
J.D. パワーでは、本調査以外にも、毎年複数の自動車関連調査の結果をリリースとして発表しています。
~2023年 J.D. パワー 自動車関連調査発表スケジュール~
- 日本自動車セールス顧客満足度調査 SSI(8月)
- 日本自動車サービス顧客満足度調査 CSI(8月)
- 日本自動車初期品質調査 IQS (9月)
- 日本自動車商品魅力度調査 APEAL(10月)
- 日本自動車テクノロジーエクスペリエンス調査 TXI(11月)
- 日本EV検討意向調査 EVC(12月)