EV市場の成長に伴い、新型モデルは所有者の満足度に大きな影響を与えている
Rivian R1Tが全15モデル中トップの顧客満足度、MINI Cooper Electricがマスマーケットブランドでのトップ、米国EV市場では日本メーカーは振るわず
CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D. パワー ジャパン(本社:米国ミシガン州 トロイ)は、現地時間2月28日に、J.D. Power 2023 U.S. Electric Vehicle Experience(EVX) Ownership StudySM (2023年米国電気自動車エクスペリエンス調査SM)の結果を発表した。
本年調査の総合満足度の平均スコアはプレミアムBEVセグメントが756ポイント、マスマーケットBEVセグメントが730ポイントとなった(1,000ポイント満点)。
購入できるバッテリー式電気自動車(BEV)の選択肢が増えるにつれ、ユーザー評価の重点は品質やスタイリングといった昔ながらの要素に移りつつある。今回、この傾向が最も顕著に見られたのが、プレミアムBEVセグメントのRivian R1TとマスマーケットBEVセグメントのMINI Cooper Electricである。
Rivian R1Tは、総合満足度スコア794ポイントで調査対象全モデル中、最も高い評価となった。特に”driving enjoyment(運転の楽しさ)” 、“interior and exterior styling(内装・外装)”での評価が高かった。
MINI Cooper Electricは782ポイントでマスマーケットBEVセグメント中、最も高い評価となった。総合的な顧客満足度に与える影響度が最も大きい”vehicle quality and reliability(車両品質と信頼性)”での高評価が結果につながった。
プレミアムとマスマーケットの違いが顕著に
- マスマーケットBEVセグメントでは3年連続で”infotainment(インフォテインメント)”に関する不具合指摘が最も多かった(19.2 PP100 ※車両100台当たり19.2箇所の不具合指摘数)。
- プレミアムBEVセグメントでは”squeaks and rattles(低級音)”(17.5 PP100)及び”exterior(外装)”(13.6 PP100)に関する不具合指摘が多かった。
- プレミアムBEVセグメントとマスマーケットBEVセグメントで評価に最も差があったのは”availability of public charging stations(充電ステーションの充実度)”だった。これはテスラ独自の充電ネットワークに大きな影響を受けた結果である。プレミアムBEVセグメントの全体平均の顧客満足度スコアが589ポイントであったのに対し、マスマーケットBEVセグメントの全体平均は大きく下回る341ポイントであった。
「牽引」がEVピックアップトラックユーザーの満足度向上に影響
- 本年より、EVピックアップトラックに特有の「牽引」に関する質問が新たに加わった。興味深いことに、EVピックアップトラックを牽引に使用したことのあるEVピックアップトラックユーザー(779ポイント)の方が、牽引に使用したことのないユーザー(753ポイント)よりも総合満足度が高かった。
- ファクター別に見ると、”battery range(航続距離)”(635ポイント/617ポイント)及び “accuracy of stated battery range(航続距離の表示精度)” (707ポイント/680ポイント)で、牽引経験のあるユーザーの評価が牽引経験のないユーザーの評価を上回った。
- 牽引により航続距離が減少しても満足度が低下していないことから、牽引が航続距離に与える影響についてメーカーから顧客に積極的に説明をすることで、ユーザーの期待に応え、満足度向上につながっていることが推測される。
新規ユーザーを取り巻く環境の変化
- 初めてバッテリー式電気自動車(BEV)を購入した人(新規ユーザー)は、2022年の74%から+11%の85%となった。特に新型モデルが多いマスマーケットBEVセグメントでは新規ユーザーの増加幅が大きく、2022年の67%から89%に急増した。
- BEVを選択する消費者が増える一方で、新規ユーザー(756ポイント)が既存ユーザー(749ポイント)の満足度を上回ったファクターは、「車両品質と信頼性」のみであった。
- 購入を決めた主な理由を見ると、マスマーケットBEVセグメントでは新規顧客の約7割(68%)が「維持費が低い」及び「税額控除/税制上の優遇措置」を挙げているのに対し、プレミアムBEVセグメントでは新規顧客の7割以上(75%)が「走行性能」を挙げている。
J.D. パワー ジャパン 代表取締役社長 兼 オートモーティブ部門 部門長 山本浩二のコメント
米国でのEV市場の急成長を受けて、本調査のランキング対象BEVモデル数は2022年の10モデルから15モデルと大きく拡大しています。この動きは、特にマスマーケットBEVセグメントで顕著で、BEV市場がアーリーアダプターからアーリーマジョリティへとシフトし始めている傾向が見られます。
マスマーケットBEVセグメントでは、先進装備や走行性能といった強みは既に当たり前となりつつあります。マジョリティのオーナーは運転の楽しさや安全性・テクノロジーだけでなく車両品質や信頼性の高さを求めています。今後さらに拡大が見込まれるEV市場は、これらのマジョリティのオーナーに支えられていくことになるでしょう。各メーカーはしっかりと車両品質や信頼性を造り込んでいく必要があると言えます。
日本市場はアメリカ市場と比較して、EV市場の拡大は遅れていますが、昨年日産と三菱が発売した軽EVをきっかけに、一気に量販価格帯のEVのシェアが拡大しつつあります。先行するアメリカの状況を踏まえながら、先進性や航続距離のアピールだけでなく、車両品質や信頼性の改善をしっかり進め、顧客満足度の高い安価なEVを日本市場に投入できるように取り組んでいくべきと考えています。
J.D. パワー 2023年米国電気自動車エクスペリエンス顧客満足度No.1を発表
総合満足度ランキングは下記の通り。
【プレミアムBEVセグメント】(ランキング対象5モデル)
第1位:Rivian R1T(794ポイント)
第2位:Tesla Model 3(759ポイント)
【マスマーケットBEVセグメント】(ランキング対象10モデル)
第1位:MINI Cooper Electric(782ポイント)
第2位:Kia EV6(762ポイント)
第3位:Ford Mustang Mach-E(742ポイント)
※PHEVセグメントは社内基準を満たさなかったため本年はランキング不成立。
《J.D. パワー 2023年 米国電気自動車エクスペリエンス(EVX)オーナーシップ調査SM概要》
本年調査は、2022年および2023年型車のバッテリー式電気自動車(BEV)またはプラグインハイブリッド車(PHEV)を購入したユーザーを対象に、電気自動車の所有体験に関する顧客満足度を聴取している。
米国の主要なEVドライバーアプリメーカーであり調査会社でもあるPlugShare社と共同で実施し、今年で3回目となる。
総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に1,000ポイント満点で総合満足度スコアを算出。
■実施期間:2022年8月~12月
■調査対象:2022年および2023年型車のBEVまたはPHEVを購入したユーザー
■調査回答者数:7,073
顧客満足度を構成する10ファクターは下記の通り:
accuracy of stated battery range(航続距離の表示精度), availability of public charging stations(充電ステーションの充実度), battery range(航続距離), cost of ownership(所有総コスト), driving enjoyment(運転の楽しさ), ease of charging at home(自宅充電のしやすさ), interior and exterior styling(内装・外装), safety and technology features(安全性と先進装備), service experience(サービス), vehicle quality and reliability(車両品質と信頼性)
*本報道資料は現地時間 2023年2月28日に米国で発表されたリリースを要約したものです。 原文リリースはこちら
*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。
【ご注意】本紙は報道用資料です。弊社の許可なく本資料に掲載されている情報や結果を広告や販促活動に転用することを禁じます。
PlugShareについて:
カリフォルニア州エルセグンドに本拠地を置くPlugShareは、EVインフラストラクチャについて世界で最も包括的な調査を行っている企業である。同社が開発した世界で最も人気のあるEVドライバーアプリ「PlugShare」アプリは、iOS、AndroidおよびWebに対応しており、北米では多くのドライバーが使用、また世界中で100万人以上のEVドライバーが使用している。PlugShareは、EVに関する高度なデータツール、レポート、カスタムコンサルティング、包括的な調査を自動車メーカー、公共事業会社、充電ネットワーク会社、政府、およびその他のEV業界関係者に提供している。同社は、世界最大のEVドライバー調査パネルであるPlugInsightsを有しており、現在のメンバー数は63,000人以上を誇る。
J.D. パワーについて:
J.D. パワー(本社:米国ミシガン州トロイ)は消費者インサイト、アドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。50年以上にわたり、ビッグデータやAI、アルゴリズムモデリング機能を駆使し、消費者行動を捉え、世界を牽引する企業に、ブランドや製品との顧客の相互作用に関する鋭い業界インテリジェンスを提供するパイオニアです。
J.D. パワーは、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋にオフィスを構えています。事業内容の詳細については、https://japan.jdpower.com/jaをご覧ください。