コラム

顧客が語る「未解決コール」の要因

【カスタマーサービス アドバイス&インサイト】

第10回 :顧客が語る「未解決コール」の要因

CSA_topimage_10
※本記事は2024年8月27日に米国J.D. パワーにて発行されたコラム(“What Customers Say About Unresolved Calls” by Scott Killingsworth)を翻訳したものです。
 
第1回コラム では、電話を通じてオペレーターが行うカスタマーサービスの満足度に最も大きく影響する要因は、「問題解決の早さ」であり、「通話の要点確認」が、解決に対する顧客の認識を向上させるデータ主導の戦略であると書いたが、その後、懸念すべき傾向がデータに見られた。
「問題解決」や「オペレーターの知識」に対する顧客の認識が低下していたのである。
 
特に、電話が転送され、顧客が同じ情報を繰り返し伝えなければならないケースでその傾向が顕著だった。このような状況は、オペレーターが顧客の問題を十分に理解し、効果的な解決策を見つける能力に対し、顧客の信頼を損なう結果となった。
顧客が電話対応で「問題が解決されなかった」と回答した理由をより深く理解するため、私たちは追加データを分析した。回答者が「問題が解決されなかった」と述べた場合、その原因を明らかにするため複数の質問を行った。
 
さらなる分析の結果、電話対応で問題が解決されない要因として、以下が明らかになった。
 
権限の問題:担当者に問題解決の権限が与えられていなかった
約束が守られない:担当者が約束したフォローアップが実施されなかった
誤った情報提供:担当者が不正確または不完全な情報を提供した
詳細情報の不足:顧客が追加の情報を提供する必要があり、それが原因で解決に至らなかった
コミュニケーションエラー:顧客と担当者の間で意思疎通が十分に取れなかった
 
一方で、これら要因の顧客満足度への影響度は大きく異なっている。「約束が守られないこと」が最も大きな悪影響を与えており、その次に「コミュニケーションエラー」や「誤った(不正確または不十分な)情報提供」が続いている。興味深いことに、顧客が追加情報を提供する必要がある場合、他の未解決の電話と比較して全体的な満足度が向上する傾向にある。また、担当者に解決の権限がない場合、満足度への影響は最小限にとどまっている。
 
これらの調査結果は、誠実さと透明性の重要度を強調するものである。フォローアップにおいて顧客に過剰な期待を抱かせ、顧客の期待を裏切ることは満足度に深刻な悪影響を与える。遅延の可能性や次の手順を率直に伝えることで信頼が構築される。また、追加の顧客情報が必要な場合、それを明確に伝えることが不満の軽減に繋がる。
例えば、請求エラーを認め、返金処理として顧客のアカウントにクレジット(返金相当額)*1を付与する場合の説明として、以下のような表現が考えられる。
「このたびの請求エラーについて、誠に申し訳ございませんでした。ご不便をおかけし大変恐縮です。エラーを修正し、返金相当額がアカウントに反映されるよう手配します。通常、反映されるまでに2回の請求サイクルが必要となりますが、時折さらに時間がかかることがあるため、そうなった場合は私たちにお知らせください。」というものだ。このような説明によって期待値を明確にし、次のステップを示すことができる。これにより、企業は問題を理解し、配慮があり、解決に尽力しているという信頼を与えることができる。
*1 請求エラーで発生した返金分が、顧客のアカウントに「利用可能な金額」として付与されるもの。次回以降の請求額から差し引かれる形で利用される場合が多い。
 
誠実さに加え、担当者に権限を与えることの重要性も浮き彫りとなった。担当者が上にエスカレーションせずに問題を解決できるようにすることで、顧客満足度は向上する。しかし、即時解決が難しい場合でも、明確なコミュニケーションと適切な期待値の設定が不可欠である。問題解決に追加の顧客情報が必要な場合、担当者はそれを率直に伝えるべきである。必要な情報がないまま問題を解決しようとすることは、満足度を大きく低下させる可能性があると私たちのデータは示している。一方で、顧客が解決プロセスにおける自分の役割を理解している場合、たとえ最初の通話で問題が完全に解決しなくても、満足度が向上する傾向が見られる。
 
これらの主要な領域に取り組むことで、通話の解決率と顧客満足度を大幅に向上させることができる。
主なポイントは以下の通り:
  •  約束を守り、顧客の期待値を管理することを優先する。
  • コミュニケーションと情報の正確性を向上させる。
  • 可能な限り、担当者に問題解決の権限を与える。
  • 制限事項や次のステップについて透明性を確保する。
 
これらの戦略を実行することで、より良い顧客体験を提供し、顧客との信頼関係をより強固にすることができる。

 

 
J.D. パワーでは業界ベンチマーク調査データや各種トレーニング・コンサルティングを通じて、コンタクトセンターのCX向上を支援しています。

詳しくはこちら

 

業界ベンチマーク調査や各種トレーニング・コンサルティングに関するお問い合わせ

CONTACT US

 

 

Industries we Service