CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D. パワー ジャパン
(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)は、2020年 生命保険契約満足度調査SMの結果を発表した。
生命保険業界では、過去の保険金不払い問題や不適切販売を踏まえ、営業職員・代理店担当者などへの教育研修の徹底、及び顧客に対する説明体制の強化が行われている。しかし昨年から始まった不適切販売問題の再燃は、残念ながら過去の教訓が十分に活かされていなかったケースがあることを示唆している。
本調査でも今回改めて保険商品の説明と顧客の理解について調査したところ、顧客目線での説明姿勢の徹底という点において、生命保険各社に改善の余地があること、そして各社間に大きな差があることがわかった。
契約時に営業担当者がする説明項目別に、顧客の認識と満足度を調べた。まず「主契約の保障内容」や「保険金や給付金が支払われるケース」については、7割以上の顧客が“説明があった”と回答した。こうした項目は、説明を受けたと認識されていても総合満足度の向上は見られないが、逆に説明がなかったと認識されている場合には総合満足度が大きく低下することから、顧客からも当然受けるべき説明と捉えられているものと考えられる。
一方で、「他の保険商品と比較した契約保険のメリット」「解約や解約返戻金」は、説明を受けたと認識されている場合には総合満足度が大きく向上するが、実際には“説明があった”との回答は全体の半数以下、「請求時の連絡先」「他の保険商品と比較した契約保険のリスクやデメリット」に至っては4割に満たなかった。これらは本来、契約時に説明されているべきもの*1であるが、半数以上の顧客が説明を受けたことを認識しておらず、またその認識の差を生命保険会社間で比較したところ、最大で約3倍もの差があることがわかった。
この要因には、契約時の営業担当者の説明の仕方に課題や差があることが考えられる。顧客が理解し、自らの知識として記憶に残るような説明を実施することが満足度向上において重要であるといえる。
*1 一部、契約形態や商品により該当しない
J.D. パワー グローバル・ビジネス・インテリジェンス部門 常務執行役員 梅澤希一のコメント
「保険商品自体が複雑化する中、顧客目線での説明姿勢の徹底が以前より難しくなっている現状がうかがわれる。さらに営業担当者の業績評価において新規契約獲得など収益に偏重し過ぎるあまり、顧客満足がなおざりになることのリスクを指摘するものであり、今後、営業担当者の業績評価において顧客満足度も視野に入れた複眼的な仕組みへの取り込みを期待したい。また今回の不適切販売の問題を単に特定企業の問題として捉えるのではなく、同様の問題が自社にもないか問い直す姿勢こそ、生命保険各社の経営陣に今こそ改めて強く求められていることではないであろうか。」
本調査で対象となった27社のうち、総合満足度で上位にランクした保険会社は下記の通り。
第1位:プルデンシャル生命 (728ポイント)
3年連続の1位。 「顧客対応」「商品提供」「支払保険料」「手続・書類」の全ファクターで最高評価。
第2位:ソニー生命 (710ポイント)
第3位:FWD富士生命、ネオファースト生命 (同点、704ポイント)
《2020年J.D. パワー生命保険契約満足度調査SM概要》
年に一回、直近1年以内に生命保険を新規購入・更新手続きを行った顧客を対象に、契約プロセスにおける保険会社に対する満足度を聴取し明らかにする調査。今年で10回目の実施となる。
■実施期間:2019年12月 ■調査方法:インターネット調査
■調査対象:直近1年以内に生命保険を新規購入・更新手続きを行った人
■調査回答者数:8,928人
総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に1,000ポイント満点で総合満足度スコアを算出。顧客満足度を構成するファクターは、総合満足度に対する影響度が大きい順に、「顧客対応」(34%)、「手続・書類」(28%)、「支払保険料」(20%)、「商品提供」(18%)となっている(カッコ内は影響度)。