デジタルチャネルに対する顧客の期待
【カスタマーサービス アドバイス&インサイト】第5回 :デジタルチャネルに対する顧客の期待
※本記事は2023年3月29日に米国J.D. パワーにて発行されたコラム("Customer Expectations for Digital" By Michael Vermillion)を翻訳したものです。
顧客がデジタルチャネル(ウェブサイトやアプリ等)に何を期待しているかを理解することは、優れたデジタル体験を提供する上で重要である。
J.D. パワーが実施した様々な業種の数百に及ぶブランドのデジタル顧客体験に関する調査によると、デジタルチャネルに対する顧客の期待値は業界を問わず類似していることがわかっている。そこで、デジタルチャネルを開発・改善する際に念頭に置くべき5つの重要な要素を、以下にまとめた。
Ⅰ.デジタル体験における4つの側面(The Big 4 )は、あらゆる業種において満足度を左右する重要な要因である:
-
操作のしやすさ: 顧客は、探している情報を手間なく見つけられることを期待している
-
スピード: 顧客は、目的を持ってアプリやウェブサイトを利用するため、その目的が達成されたと認識するスピードが速ければ速いほど良い。しかし、スピードとは必ずしもページの読み込みの速さのことではないということに留意すべきである。例えば、J.D. パワー 2022年米国保険金請求デジタル・エクスペリエンス顧客満足度調査SM(J.D. Power 2022 U.S. Claims Digital Experience StudySM)によると、デジタルチャネルで手続きの進捗状況のアップデートが適切に提供されなかった場合、保険金請求プロセスが「予想より遅かった」と答える顧客が3倍多いことが判明した。一方で、保険会社のウェブサイトやアプリで適切に進捗状況がアップデートされていた場合、保険金請求プロセスは「予想よりも早かった」と回答する人は約2倍となった。
-
見やすさ: アプリやウェブサイトの視覚的な魅力により、素晴らしいデジタル体験を提供することに対するブランドのこだわりが顧客に伝わる。
-
情報・内容の分かりやすさ: 情報やコンテンツの幅と深さは、顧客のデジタル体験に影響する。顧客の目的達成や問題解決の手助けになるような、より多くの情報を提供するコンテンツは常に優れている。
Ⅱ.「簡単」ではなく「とても簡単」が求められる
ポイント:まず、顧客にとっての「とても簡単」とは何かを理解することから始める必要がある。次に、デジタルチャネルの主要機能を「とても簡単」にするためのロードマップを作成し、そこに至るまでのリソースと予算を調整する。デジタル体験に対する顧客満足度の向上を目的とすることは、これらの投資を正当化するに十分なはずである。
Ⅲ.問題のない体験
顧客はデジタル体験、とりわけログインが100%問題なく行われることを期待している。どんなに小さくても、問題が発生すると満足度は大きく下がる。
ポイント: 顧客が問題点を指摘してくれるのを待つべきではない。顧客のデジタル体験に関わる問題を監視し、問題を完全に排除するための人員を割り当てるべきである。最初のインタラクションポイントであるログインプロセスから始め、進めていく。
Ⅳ.ワンチャネルでの完結
顧客はアプリやウェブサイトを利用する際、他の連絡手段に変更することなく、取引を完了させたり、探している答えを得ることを期待している。J.D. パワーの調査では、顧客がデジタルチャネルから問い合わせを始めて、問題を完全に解決するために電話に切り替えなければならない経験をした場合、満足度が劇的に低下することがわかっている。
ポイント: ワンチャネルで完結させることは難しい。まずは、アプリやウェブサイトだけでは問題を完全に解決できないケースを研究することで、そこに到達するための戦略を構築する。そのようなケースを調査して、問題の根本原因を理解することが、改善措置の参考となるだろう。
Ⅴ.セキュリティ強化
デジタル体験がよりパーソナライズ化されるにつれて、アプリやウェブサイトでの安全なやり取りに対する消費者の期待も高まっている。 また、「非常に」というキーワードが期待値の中に入っていることがわかった。今日の顧客は、デジタルチャネルを利用する際に、「非常に安全な」顧客体験を期待している。
ポイント: 顧客体験の大部分は認識に基づいたものであり、セキュリティに関しては、顧客の認識と現実との間にミスマッチが存在する場合がある。デジタル体験が非常に安全なのであれば、それを顧客に伝えることで、デジタルチャネルを利用することに対する顧客の安心感を形成するのに役立つ。
高い顧客満足度を得ている企業は、顧客が求めている体験に対してデジタル化への労力とリソースを集中させている。デジタルチャネルの満足度と定着率を高めるには、これら企業と同様の取り組みをする必要がある。エンドユーザーとなる顧客が求める体験に焦点を当てた戦略を立て、顧客の要望、ニーズ、期待に基づき、デジタルロードマップを構築する。まずは、上記の5つの観点から自社のパフォーマンスを確認し、注意を払う必要がある分野を特定し、顧客に愛されるデジタルチャネル構築を始めていくべきである。
J.D. パワーでは業界ベンチマーク調査データや各種トレーニング・コンサルティングを通じて、コンタクトセンターのCX向上を支援しています。
業界ベンチマーク調査や各種トレーニング・コンサルティングに関するお問い合わせ