コラム

自己解決型チャネルのジレンマ解消のためには

【カスタマーサービス アドバイス&インサイト】第 8回 :自己解決型チャネルのジレンマ解消のためには

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※本記事は2023年8月29日に米国J.D. パワーにて発行されたコラム(” Job One for Solving the Self-Service Dilemma” by Mark Miller)を翻訳したものです。

 

カスタマーサービス/サポートの責任者は、自己解決型チャネルの利用促進に向け、オペレーターによる対応数を減らしてコストをカットするという絶え間ないプレッシャーに直面している。また同時に、顧客満足度を向上、或いは少なくとも維持することも求められている。この「かみそりの刃を渡る」くらい危険な状況は、私たちに「顧客満足度を犠牲にすることなく、自己解決型チャネルの定着を最大化するにはどうすればよいか?」と問いかけている。
 
この問題を解決するカギは、長期戦に臨み戦いに勝つこと、つまり長期的利益の創出にコミットするビジネス規律を持つことである。これは、目先の短期的なコスト削減で成功を測る「短期決戦志向」とは対照的である。容易なことではないが、長期的な収益性重視のアプローチをとる上で、説得力のあるビジネスケースが存在すると私たちは考えている。
 
まずやるべきこと:パラダイム・シフト
カスタマーサービスを単なるコストセンターとしてしか見ていない企業は、当然、「コスト」と「効率性」へと意識が傾いていく。効率性が最も「良い」と言えるのは、企業がそのブランド・プロミスに見合ったレベルのサポートサービスを、可能な限り安価に提供できる場合である。同じサポートサービスを、より低コストで提供できれば良いということは、誰もが認めるところである。しかし、J.D. パワー調査によれば、現実は、低コストでのサポートサービスの提供は、高コストでのサポートサービス提供と比較し、優れていないことが多い。そしてこれは、顧客満足度を大幅に低下させ、顧客を失うリスクがある。
 
この点をさらに詳しく説明するために、簡単な計算を用いて、コスト削減にだけ集中することの無益さを示したい。仮に、コールセンターでの対応に一回当たり8ドルかかり、チャットボットやIVR(音声自動応答システム)による自己解決型チャネルでの対応に一回当たり1.50ドルかかるとすると、企業は6.50ドル節約することができる。さらに、年間1千万件のコールセンターへの入電のうち、20%を自己解決型チャネルに移行し、1,300万ドル((1千万ドル×20%)×6.50ドル)を節約できたと仮定する。これは素晴らしい経費削減だ。しかし、もし御社のサービスが顧客の期待する水準に達しておらず、満足度の低い自己解決型チャネルの利用体験が最後の一撃となり、ほんのわずかな割合でも顧客を失うことになったらどうなるだろうか?その影響は壊滅的なものになるだろう。
 
顧客一人あたりの顧客生涯価値(LTV)が2万ドルだと仮定しよう。そして全顧客の0.5%でも失ったとするとどうなるだろうか。
年間1千万件の問い合わせ顧客のうちの0.5%、即ち、5万人の問い合わせ顧客を失うとすると、5万人×一人あたりLTV2万ドルの計10億ドルの損失となる。少し誇張していることは認めるが、つまり、この例でのトレードオフは、9億8,700万ドル(10億ドル-1,300万ドル)の「純損失」となる。
 
これは突飛な話だろうか?
J.D. パワーは多くのクライアント企業と仕事をしてきているが、企業へのコンタクトで悪い経験をした顧客層の15%以上が、その企業のサービスの利用を継続しないことを決めている。全体から見れば些細なことに見えるが、この悪い顧客体験がその企業を追い詰めたことがわかる。もし企業が、不適切なタイミングで顧客にIVRやチャットボットを使わせ手間のかかる体験を顧客に強要することで、結果として顧客を失うということを知っていたら、おそらく別の決断をしていただろう。しかし、顧客がいなくなってからでは遅い。そのため、コストだけでなく、長期的、総合的な収益性の観点から考えるための決断を早急に下すことを強く勧める。
 
 
「スマート・コンテインメント」の効能
収益性向上への道は、どの顧客に対してはチャットボットやIVRの利用を促し続けることができて、どの顧客に対してできないかを理解することにある。この視点が確立されれば、企業は自己解決型チャネル内で「スマート・コンテインメント(賢い封じ込め)」を最大限に活用し、適切な顧客に対しての自己解決型チャネルの採用と利用を増やすことができる。自己解決型チャネルの利用を促せない顧客に対しては、あらゆる状況において「できることが制限された」自己解決型チャネルの利用を続けることを押し付けないことを勧める。より良いアプローチは、顧客をよく理解し、AIやチャットボット/IVRのセルフサービステクノロジーを活用して、一定の条件が存在する場合には一部の顧客を自己解決型チャネルから積極的に移動させるなど、ペルソナごとに異なる導線を提供することだ。その結果、顧客を自己解決型チャネルに完全に封じ込める(アブソルート・コンテインメント)可能性は減り、顧客対応コストの削減による節約効果は減るものの、反対に顧客のリテンションは改善され、長期的には収益性が向上する。
 
もし経営陣が「スマート・コンテインメント」の利点を理解せず、「長期的利益を重視すること」を受け入れなければ、顧客を強引に自己解決型チャネルに封じ込め、短期的なコスト削減の「戦い」には勝つだろうが、長期的には「戦い」には大きく負けてしまうだろう。このトレードオフには価値はない。
 
 
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